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「カミカゼのような選択だ」の声も… 41歳ジェラードがプレミア監督初挑戦で《相思相愛のリバプールとも戦う道》を選んだワケ
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byNeville Williams/Getty Images
posted2021/11/15 11:02
アストンビラの新監督に就任したジェラード。プレミアの舞台でどのような指揮を見せてくれるか
「フットボールの世界では、理想の時機など、そうそうあるものではない」と、リバプールで長年にわたってジェラードを支えてきた元イングランド代表CBは『ザ・テレグラフ』紙に記した。
「スティービーも、あと半年はグラスゴーに残り、2度目のリーグタイトルを手にしてから、新天地を求めたかったはずだ。この時期にアイブロックス(レンジャーズの本拠地)を離れるのは、非常に辛いものであり、リスクでもある。だがフットボールにおける重要な選択──選手、監督、オーナーを問わず──というものは、常にギャンブル性を孕んでいる」
奇しくもキャラガーは、今季の『NumberPLUS欧州蹴球名鑑』でアストンビラをダークホースのひとつに挙げている。昨季までの絶対エース、ジャック・グリーリッシュをシティに放出しながらも、新戦力にも期待でき、トップハーフ入りも狙えそうだ、と語っていた。現在、ビラは5連敗中で、キャラガーの予想に反して16位に沈んでしまっているが、潜在能力は大きいはずだ。
「ジェラードは良いスクアッドを引き継ぐことになる」とキャラガーの手記は続く。「GKエミリアーノ・マルティネス、右SBマティ・キャッシュ、MFジョン・マッギン、FWダニー・イングスとオリー・ワトキンスと、質の高い主軸が揃う。レオン・ベイリーやエミリアーノ・ブエンディアといった新戦力も、もっとやれるはずだ。彼らは本領を発揮できていないだけなのだ。ビラは英国のビッグクラブのひとつであり、今も眠れる巨人のひとつと見なされている」
ジェラードには「名門復活」のタスクがふさわしい
つまりジェラードは、ここでも再び名門の復活に挑むことになる。過去にイングランドの1部リーグを7度制し(最後の優勝は1981年)、1982年には欧州の頂点に立っている古豪に、栄光の日々を取り戻すことが求められているのだ。「豊かな歴史と伝統を持つアストンビラの監督になれて、これ以上ないほどに誇らしい」と本人も語っている。
彼をよく知るキャラガーが言うように、ジェラードは「目の前の任務に完全に集中」し、「その存在感とオーラ、自他への高い要求で、チームを変革」しうる。そして、クロップやペップ・グアルディオラ、トーマス・トゥヘルら超一流の指揮官たちと鎬を削り、新天地でも成功を収めれば、古巣リバプールへ監督として舞い戻る日が近づいてくるだろう。
12月11日、アストンビラのスティーブン・ジェラード監督が、“敵地”アンフィールドに足を踏み入れる。その時、あの熱い球技場はいつにも増して、エモーショナルになるはずだ。
リバプール対ジェラード──これはちょっと見逃せない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。