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「カミカゼのような選択だ」の声も… 41歳ジェラードがプレミア監督初挑戦で《相思相愛のリバプールとも戦う道》を選んだワケ
posted2021/11/15 11:02
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Neville Williams/Getty Images
名門を復活させたスーパースターが、プレミアリーグに初挑戦する。
11月11日、リバプール史上随一のレジェンド、スティーブン・ジェラードがスコットランド王者レンジャーズの監督の座を離れ、アストンビラの指揮官に就任した。すでに複数の監督が交代している今季のプレミアリーグでも、この衝撃に勝るものはない。『BBCスポーツ・スコットランド』によると、ビラがレンジャーズに450万ポンド(約6億8000万円)の賠償金を払い、3年半の契約を結んだという。
“イスタンブールの奇跡”とリバプール愛
ジェラードは現役時代、愛する地元クラブの下部組織からファーストチームまで駆け上がり、2005年には主将として、のちに“イスタンブールの奇跡”と呼ばれることになるチャンピオンズリーグ優勝の原動力となった。その後は、複数のビッグクラブから勧誘されながらも、欧州ではリバプール一筋を貫いた。
ペレやジネディーヌ・ジダンに「世界最高のフットボーラー」と評されたジェラードは、2016年11月にMLSのLAギャラクシーで現役生活を終えると、翌年1月にリバプールのアカデミーで指導者として歩み出した。そこでは、彼の正当後継者と目されるカーティス・ジョーンズらを劇的に成長させている。
「スティーブンはリバプールFCのアカデミーで、若手のトッププレーヤーたちを発展させてきた」とアストンビラのクリスティアン・パースロウCEOは語った。「我々アストンビラは、その経験を高く評価している」
パースロウCEOはかつて、リバプールの統括ディレクターを務めており、そこでジェラードと親交を深めたという。今回の移籍のキーマンと目される同CEOは、次のように続ける。
「その後、彼は勇気ある決断をした。スコットランドの名門という高い重圧がかかる厳しい環境で、自らの能力を試したのだ」
古巣の育成組織の方が重圧は少ないはずだが
確かに、古巣の育成組織で若手と働き続ける方が、プレッシャーは少ないはずだ。加えてファーストチームのユルゲン・クロップ監督の哲学や手法を、間近でじっくりと学ぶこともできただろう。
だが長年、熱狂のアンフィールドの中心に立ち続けてきたジェラードは、安定した緩やかな道のりではなく、激しい勝負の道を望んだ。約1年半でユースコーチを終え、2018年夏にレンジャーズの監督となった。