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和服姿で「ハイチーズ!」、愛車はトヨタ、好物はかけうどん…中日・ビシエドが名古屋で愛されるワケ〈新たに3年契約で残留〉
text by
渋谷真Makoto Shibutani
photograph byKYODO
posted2021/11/11 11:06
残留が決まった“タンケ”ことビシエドが名古屋で愛される理由とは
〈努力家〉不慣れな一塁守備→ゴールデングラブ賞獲得
タンケは努力の人である。桂川通訳は「来日1年目のキャンプが一番大変だった」と振り返る。
「とりわけ最初の1週間ですね。練習が厳しすぎて。タンケはバカ騒ぎするタイプではありませんし、恥ずかしがり屋。厳しいメニューについていくのは大変だったと思いますが、そこを乗り越えて、開幕3連戦で3連発できたのが本当に良かった」
来日前は外野手。不慣れな一塁守備ではファウルフライが苦手だった。背走する方向を、どうしても見失うのだ。ある試合では複数回、ミスをした。その時のタンケの悲しげな表情が、桂川通訳は今でも忘れられないという。
「本当に泣いていたわけではありませんが、そう見えるくらいに悔しがっていました。でも、そこでタンケはあきらめませんでした。観察力もすごいんです。うまい選手のプレーを見て、コーチのノックを受けて。練習は嘘をつかないんだなと思いました。今では(他の野手を制して)自分で捕りにいきますもんね」
フライを捕れなかったタンケが、昨シーズンはとうとうゴールデングラブ賞に選ばれた。「打てば文句はないだろう」ではなく、日本で覚え、うまくなった一塁手である。
立浪和義新監督は、もちろん打線の軸にタンケを据えようとしているが、同時に今シーズン17本の本塁打はもっと増やせるとも期待している。強烈なライナーは広いバンテリンドームの外野スタンドに、ロケット砲のように突き刺さりもするが、高いフェンスに阻まれることもある。もう少し打球に角度がつけば、30本は十分に望める。守備を努力と探究心で克服したタンケなら、きっとできるはずだ。
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