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かつて「清楚で地味」だった女王シェルバコワ17歳が見せた妖艶さと凄み…イタリア大会優勝でも気が抜けない〈ロシアの過酷選考レース〉
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/11/10 17:00
GPシリーズ第3戦イタリア大会にて、世界女王としての貫禄を見せつけ優勝したシェルバコワ
過酷を極めるロシア女子のオリンピック選考
GP初戦のスケートアメリカではアレクサンドラ・トゥルソワが優勝し、新人のダリア・ウサチェワが2位。二戦目のスケートカナダではカミラ・ワリエワ、トゥクタミシェワ、コストルナヤとロシア勢が表彰台を独占。特にワリエワが女子の歴代スコアを更新させて、センセーショナルなシニアデビューを飾った。そんな中でロシアのトップ選手の中では最も遅く、この3戦目でGPシリーズに登場したシェルバコワ。
世界チャンピオンとして、自分は他のロシア女子よりも一歩先をいっていると感じるか、と質問されると、シェルバコワはこう答えた。
「ロシアからは、次々と若い新しい才能ある女子が出てきています。世界タイトルを手にしたのは昨シーズンのことで、今年は新しいスタート。私は他の選手と、全く同じ位置にいると思っています」
彼女がそう言う通り、今のロシアの女子は北京オリンピック3枠を7人のトップ選手が激しく競り合っているのが現状だ。ロシアは他の国のように自国の選手権終了後にすっぱりと代表を決定しない。毎回1月の欧州選手権の結果も選考対象にして、選手たちはギリギリまで気を抜くことは許されない。世界チャンピオンといえど、油断をすれば置いていかれる。
シェルバコワが今回出した236.78は、スケートカナダのワリエワの265.08に次いでグランプリシリーズで2番目に高いスコアだった。
「ここでは4回転が戻ってきたことを見せるのが目的で、それは達成できました」とシェルバコワ。「でもSPのミスは許されないこと。SPはクリーンに滑らなくては。徹底的に練習していきます」と世界女王は、表情を引き締めた。