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「ユウキは悪くない」レッドブルのイチャモンに関係者が角田裕毅を全面擁護した、メキシコGP予選のゴタゴタの真相
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/11/10 06:00
エンジン交換によりグリッド降格が決まっていた角田は、メキシコGP予選でチームメイトのガスリーの上位進出に貢献する働きを見せた
続いて、レッドブルとパートナーを組み、現在チャンピオンシップ争いを行っているホンダの山本雅史マネージングディレクター(MD)だ。予選後に角田と会って、こう告げた。
「あなたはまったく悪くない」
翌日の日曜日、もう一人、角田を擁護する人物が登場した。レッドブルでリザーブ兼テストドライバーを務めているアレクサンダー・アルボンだ。日曜日の朝、ホンダの山本MDを訪れ、こう言った。
「ユウキはまったく悪くないし、あれでユウキが何か言われているのはおかしいよ」
レッドブルに所属するドライバーが自チームの代表が発したコメントを否定することは、極めて稀だ。
じつはアルボンは今シーズン後半戦に入ってから、臨時コーチ役として角田をサポートしている。自分がサポートしているドライバーが謂れのない事実で非難されていることを、同じドライバーとして見逃せなかった。
山本MDの打開策
そんなアルボンの振る舞いに、山本MDも応えた。角田はレッドブルと契約しているドライバーであると同時に、ホンダが育てたドライバーでもある。レッドブルの重鎮であるヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)に角田と会ってもらい、レース前に雑念を払ってもらうというアイディアをアルボンに提案。納得したアルボンは、山本MDとともにマルコの元へ行った。アルボンと山本MDの話を聞いたマルコが角田に会いに行くのに、時間はかからなかった。場所はレッドブルとアルファタウリにもパワーユニットを供給しているホンダのホスピタリティハウスに決まった。
角田はアルファタウリから、マルコはレッドブルからやってきて、ホンダのホスピタリティハウスで2人っきりで話し合いを開始。
「君は悪くない。悪いのは、的確な指示を適切なタイミングで出さなかった、君のエンジニアだ」
それを角田に伝えると、マルコは席を立ち、自分のチームのホスピタリティハウスへ帰っていった。
ときに不条理がまかり通るF1の世界で、自分の願いを叶えるには多くの人々からサポートを受けなければならない。問題はそれに足る信頼を得ているかどうかだ。
角田の決勝レースは1周目リタイヤと無念の結果になったが、少なくとも不信感を抱かずスタートできたはずだ。この週末、角田はまたひと回り成長したに違いない。