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指揮官が賞賛する鎌田大地の「インテリジェンス」と長谷部誠の“ベテランらしさ” 苦しむフランクフルトで2人の評価が再上昇中
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/11/04 17:00
リーグ戦と並行してヨーロッパリーグを戦う今季のフランクフルト。快勝を収めたオリンピアコス戦では長谷部と鎌田が躍動した
ボールを失っても、スペースへ走り込んでパスが来なくても、そこからすぐにまた走り直し、守備をして、スペースを埋めて、コースを消す。攻撃だけではなく、鎌田は守備でも指示を出すようになっている。頼もしいことこの上ない。
守備で十分に動き、それでいて攻撃でもコンスタントに仕事ができるようになったら、鎌田はまたひとつ上のステージへと辿り着けるはずだ。
特に印象深かったのは73分のシーンだ。DFマルティン・ヒンターエッガーが自陣深い位置でボールを奪い、中盤の左サイドでフリーになっていた鎌田へパスを送る。そこへ、フィリップ・コスティッチが猛ダッシュで攻め上がってくる。ただ、最後のスルーパスのタイミングが合わず、ボールはそのままゴールラインを割ってしまった。
普通、60m近くダッシュで駆け上がったのにパスがずれたときは、それなりにフラストレーションを示すものだ。だが、コスティッチは鎌田とすれ違うとき何気ない様子でポンポンと背中を叩いて、ポジションへ戻っていった。確かな信頼関係がここにはある。
ELではグループ首位も、リーグ戦では低調
結局、オリンピアコス戦は3-1の快勝。地元フランクフルトの記者は「今季間違いなくベストパフォーマンス」と唸っていた。みんなの表情が明るい。
試合後の会見で「ヨーロッパリーグの重要さを実感したか?」と尋ねられたグラスナー監督は「この雰囲気を楽しませてもらった。オリンピアコスはCLの常連だ。ホームのこの雰囲気で戦えたことは素晴らしい。そしてファンのみんなに勝利を味わってもらえたのがよかった」と嬉しそうに答えていた。手応えも十分あったことだろう。
それは選手も同様に違いない。この日ケガから復帰したキャプテンのセバスティアン・ローデは「この前のヘルタ戦は残念だった。今日はスタジアムの雰囲気、ナイトゲーム、ファンの声援とすべてがうまくはまった。この調子をコンスタントに出せるようにして、これからにつなげたい」と気合いを入れ直していた。
しかし直後のリーグ、ボーフム戦は低調な内容で0-2の完敗。パシエンシアのPK失敗、鎌田が素晴らしいボールコントロールと鋭い動き出しからポストを直撃したシュート以外、大きなチャンスを作ることができなかった。
ヨーロッパリーグではグループ首位に立つ一方、ブンデスリーガでは10試合を終えてわずか1勝と苦しんでいる。
相手に守備を固められ、ハードに戦われると打つ手がない試合が目立つ。それだけに攻撃に変化をもたらす縦パスを出せる長谷部、そしてそのパスをチャンスにつなげられる鎌田の2人の活躍が、これまで以上に重要となるはずだ。