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日本凱旋試合は〈IBF世界6位〉との“格差マッチ”…井上尚弥の統一戦がなかなか決まらない理由<ドネア戦から2年>
posted2021/11/02 11:05
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Getty Images
リング誌のパウンド・フォー・パウンド・ランキングで3位にランクされるバンタム級2冠王者“モンスター”井上尚弥(大橋)の次期防衛戦が決定した。12月14日、両国国技館でIBF同級6位のアラン・ディパエン(タイ)を迎え撃つ。今回の試合が決まった背景と、その意味について考えてみた。
10月29日に開かれたオンライン記者会見で、井上は12月の防衛戦について、開口一番次のように語った。
「日本での試合は2年ぶり。ようやく日本でできることに喜びを感じながら、その日に向けて練習していきたいと思います」
流れに流れた統一戦…ディパエン戦決定の経緯
井上が日本で試合を披露するのは2019年11月、トーナメント戦で真の王者を決めるWBSS決勝、ノニト・ドネア(フィリピン)戦以来およそ2年ぶり。ここ2試合はラスベガスでの防衛戦であり、井上の“凱旋防衛戦”を国内の多くのファンが歓迎することだろう。一方で、「ディパエン?」と首をひねったファンがいることも確かだ。
無名のタイ選手は世界タイトル初挑戦。12勝11KO2敗という戦績が示すように好戦的なハードパンチが自慢の選手ながら、今年3月にIBF同級パンパシフィック王座を獲得して世界ランク入りしたばかり。井上の4団体統一を期待するファンが「物足りない」と感じても不思議ではない。
しかし、このような試合がセットされたのには理由がある。WBAスーパーとIBF王座を保持する井上は昨年4月、ラスベガスでWBO王者ジョンリール・カシメロ(フィリピン)との3団体統一戦が決まりながら、コロナ禍の発生により試合は延期に。これが最初のつまずきとなった。
その後、井上は昨年10月と今年6月にラスベガスで防衛に成功。いよいよWBO王者カシメロ、WBC王者ノニト・ドネア(フィリピン)との統一戦実現に期待が高まった。井上陣営はWBSS決勝で死闘を演じたドネアとの統一戦交渉に入ったものの、WBCがドネアに指名試合をオーダーしてこれが消滅。同じくWBOもカシメロに指名戦の指令を出し、統一戦はひとまずお預けになった。