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日本凱旋試合は〈IBF世界6位〉との“格差マッチ”…井上尚弥の統一戦がなかなか決まらない理由<ドネア戦から2年>
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byGetty Images
posted2021/11/02 11:05
WBSS決勝で拳を交わして以来、お互いをリスペクトする間柄となった井上尚弥とノニト・ドネア。彼らがリング上で再会する日はやってくるのか
順当に返り討ちか、まさかの“モンスター狩り”か
さて、今回の防衛戦は相手が無名とはいえ、見どころは大いにあると言えるだろう。何より12月の試合は来春の統一戦に向けての前哨戦という位置づけだ。井上本人も「来春に統一戦ができるだろうということ。日本で久しぶりにできること」を今回の試合のモチベーションとして掲げた。目標とする4団体統一に向けて、ここでヘタな試合はできないのだ。
見る側にしてみれば、井上の現在の調整ぶり、コンディションを確認できるという意味で興味は尽きない。期待通り豪快なKOで勝利すれば良し。もし、あまりいいパフォーマンスを見せられなければ、「バンタム級ではもう減量が厳しいのか?」「モチベーションが落ちてきたのか?」など、その原因を探ることで楽しめる。
もう一つ強調しておきたいのは、井上に挑戦するディパエンは今までのディパエンとは違うということだ。ディパエンにとって井上戦は間違いなくキャリア最大、千載一遇のチャンスである。人生のすべてをかけて“モンスター狩り”という困難なミッションに挑んでくるだろう。
格下相手の「勝って当たり前」という試合はどんなチャンピオンでも嫌なものだ。思わぬ伏兵に足元をすくわれたり、大苦戦を強いられたりしたチャンピオンは古今東西いくらでもいる。しかし、井上は世界王者になったばかりの頃のコンディション不良だった試合を除いて、そうした苦戦や退屈な試合を私たちに見せたことがない。これこそモンスターのモンスターと呼ばれる所以だ。
かつて「35歳で現役生活に区切りをつける」と語った井上は、現在28歳。来年4月10日には29歳の誕生日を迎える。全盛期と言える年齢にも関わらず、戦うべき相手との試合がなかなか決まらないため、気を揉んでいるファンも少なくないだろう。しかし「来春に統一戦」という目処が立ったことで、ネジを巻き直しているのは間違いない。
12月14日の両国国技館は井上が来年に大きく羽ばたくためのステップとなる一戦だ。高いモチベーションをキープし続ける井上のパフォーマンスから、一瞬たりとも目が離せない。
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