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<ヤクルト&オリックス> キーワードは「ホークアイ」と「風呂場」!? 史上初、セ・パともに前年最下位から優勝の秘訣って?
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プチ鹿島Petit Kashima
posted2021/10/31 06:00
昨季最下位から一転、ヤクルトは6年ぶり、オリックスは25年ぶりの頂点。高津監督は5度、中嶋監督は3度宙に舞った
「スポニチ」にはMVP当確といわれる山本由伸投手の手記があり《チームは個々の能力が上がった。でも、一番は中嶋監督の力だと思う》とあった。
実は由伸投手は中嶋監督とは6月までほとんど話す機会がなかったという。7月2日のメットライフでの西武戦で助言をもらって以降、京セラドームの風呂場でも話すようになった。ここで「風呂場」というキーワードが出てきた。今年ブレイクしたラオウこと杉本裕太郎の有名なエピソードがこれ。
《去年、監督代行になられたときにお風呂場で『一緒に1軍行くぞ!』と》(日刊スポーツ10月28日)
ラオウはファーム暮らしが続いていた昨年8月21日に運命が変わった。球団施設で二軍戦に備えていたら風呂場で居合わせた中嶋監督代行(当時)から「一緒に一軍行くぞ!」と昇格指令が出たのだ。日刊スポーツは杉本をこう書く。「風呂場から連れ出された男」。
報知にはこんなエピソードも。シーズン大詰めで主力打者の吉田正が離脱する最大の危機を迎えた頃のこと。
《「正直、心が折れかけた」と中嶋監督。選手と一緒に入り、世間話に興じる京セラDのサウナ。いつもは明るい場で黙りこくり、空気は重かった。「切り替えていきましょう!」。ジョーク交じりに声をかけたのが杉本。「いろいろ考えてんだよ!」と笑って返し、和んだ。》
またしてもサウナ、風呂場である。オリックス優勝に風呂場あり。つまりこれは監督と選手の関係性がいかにノビノビしているかという象徴でもある。
ノビノビといえば若手の躍進も素晴らしかった。スポニチでは宮城大弥投手(20)と紅林弘太郎内野手(19)がそれぞれの素顔を語る。紅林の宮城への第一印象は「小さいオジサン(笑い)」。楽しそう。
伝説のシリーズ再現なるか
さてヤクルトとオリックスが日本シリーズに進出した場合、ヤクルトがホームの第3~5戦は明治神宮大会と日程が重なり神宮が使用できず東京ドームになる。実は、1978年のヤクルトと阪急(現オリックス)の日本シリーズも後楽園球場(現東京ドーム)での開催だった。
78年はどんなシリーズだったのか?
《第7戦はヤクルト・大杉の左翼ポール際の本塁打を巡り阪急・上田監督が「ファウルだ」と猛抗議。1時間19分の中断の末、広岡監督率いるヤクルトが阪急の4連覇を阻止し初の日本一に輝いた。相手がオリックスなら伝説のシリーズの再現。ぜひ見てみたいものだ。》(サンスポ「甘口辛口」10月28日)
なんというめぐりあわせ! 昭和からのファンもたまりません。その前にクライマックスシリーズがあります。今年の野球の季節はまだこれから。
以上、10月のスポーツ新聞時評でした。