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「コントレイルのベストは左回りのワンターン」 矢作調教師に聞く、現役最強をかけた“ラストの秋競馬は勝てるのか?”
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byKeiji Ishikawa
posted2021/10/30 06:01
短距離女王グランアレグリアらを抑え単勝1.8倍の1番人気で迎えた大阪杯は3着敗退
「一つはこのジャパンカップ。もう一つは東京スポーツ杯2歳S」
東京スポーツ杯2歳Sと言えば、コントレイルがその傑出した性能の高さを世に強烈にアピールしたレースだ。鞍上は騎乗停止中の福永の代打、世界のライアン・ムーア。直線半ばから追い出されると、後方寄りのポジションから圧巻の切れ味を発揮して一気に抜け出し、最後まで緩めずに追われて5馬身差の圧勝を演じたのだ。1分44秒5の走破時計は従来の2歳レコードを1秒1も短縮。矢作師が「膝の震えがしばらくの間止まらなかった」と振り返るあの一戦だ。
コントレイルは「自分の想像を常に超越してきた馬です」
「新馬戦を勝ったあとは、萩Sを叩いてからの東スポ杯と予定を組んでいたのに、それができなくてブッツケの重賞初挑戦。予定を延ばしたにもかかわらず、中身は急仕上げだったんです。そんな状態でこれだけの走りをしてくれるの? という感覚が頭の中にずっと残っていたのが、アーモンドアイ、デアリングタクトと対戦したあのジャパンカップでも、恰好はつくだろうと思ってしまった理由かもしれません」
矢作師は「コントレイルは、自分の想像を常に超越してきた馬です」とも言う。両前脚の球節に不安が出て、1歳の終わりから2歳の前半という大事な半年間、人を乗せる調教を休まざるを得なかったのに、乗り出しを始めるとすぐに同級生に追いついてしまう基礎体力の確かさはほぼ例がないもの。8月に栗東入りの打診をされたときには、思わず「ウソでしょ?」と言ってしまったという矢作師は、入厩を受け入れながらも「ゲート試験に受かったらもう一度牧場に戻すことになるんだろうなと思っていた」と言うのだ。