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「隣にパートナーがいるから大丈夫」ジャンプで転倒…大舞台のピンチで三浦・木原ペアを支えた信頼関係〈スケートアメリカ銀〉
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/10/28 11:02
スケートアメリカにて、GP大会自身初のメダルを獲得した三浦璃来・木原龍一組
「三浦さんは絶対立て直してくるって信じていた」
そう言い終わると、モニターに映った順位リストを見て「えっ!?」と声を上げた。彼女たちの後に滑ったSP2位のボイコワ&コズロフスキーのミスが続き、自分たちが追い越されていないことに気が付いたのである。銀メダルが確定した。
「えっ!?」再び信じられないというように声をあげる三浦に、木原が囁き声で「知らなかった?」「良かったね」と他人事のように言うのが聞こえて、報道陣から笑い声がもれた。
少しずつ声が回復してきた木原が、彼自身は三浦の転倒からどう立て直したのかを説明した。「きつい練習をしっかり積んできたので、三浦さんは絶対立て直してくるって信じていたので、ぼくはぼくの仕事をやるだけと切り替えました」
結成してまだ2年余りの二人の言葉の端々に感じられることは、お互いに対する信頼の深さである。
「滑りに関しては、120%信頼しています」と、木原が三浦を絶賛すると、三浦は「(木原は)9歳上ということでしっかりしているので、インタビューの時とか、すごく勉強になります」と応える。
初めてのトライアウトから相性は抜群だった
木原にとって三浦は3人目、三浦にとって木原は2人目のパートナーである。
だが二人は、初めてのトライアウトから相性は抜群だったのだという。
「相性っていうのは、僕たちも不思議だなと思うんですけど、一番最初に滑った瞬間からこれは絶対うまくいくと確信した相手だったので。言葉では言い表せない不思議な相性っていうのがペアにはあるんだな、と思っています」そう木原は説明する。
「トライアウトのとき、ツイストリフトをやらせていただいた。ぼくの投げたいタイミングと、100%一回目からぴったり合った。スロウジャンプも彼女は瞬発系の筋力が強いので、その辺の相性がぴったりで」
そう言う木原と三浦には、前述の三浦のコメントの通り、9歳の年齢差がある。
「2019年に結成した時は、三浦さんはまだ幼いなという印象だった。でもコロナで帰れなかった期間、精神的にも成長したなと感じていて、今すごく頼もしいです」木原がそう言うと、三浦は「頼もしいって、初めて言われました」と笑った。