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「隣にパートナーがいるから大丈夫」ジャンプで転倒…大舞台のピンチで三浦・木原ペアを支えた信頼関係〈スケートアメリカ銀〉

posted2021/10/28 11:02

 
「隣にパートナーがいるから大丈夫」ジャンプで転倒…大舞台のピンチで三浦・木原ペアを支えた信頼関係〈スケートアメリカ銀〉<Number Web> photograph by Getty Images

スケートアメリカにて、GP大会自身初のメダルを獲得した三浦璃来・木原龍一組

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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Getty Images

 オーリンズアリーナの氷に上に出てきた三浦璃来と木原龍一は、いつものようにニコニコと笑っていた。特に木原はどうしてそんなに嬉しいのだろうか、というほどの笑顔で、リラックスしているように見える。直前の6分間ウォームアップでも、二人とも体がよく動いていた。

 これは、いけそうだ。

 SPをノーミスで滑り切り3位と好位置につけた二人にとって、初のGP大会メダルのチャンスだった。

 音楽が始まり、3+2+2トウループがしっかり決まった。ソロジャンプの失敗がほとんどないのが、彼らの強みの一つだ。ところが、スロウ3ルッツで三浦が転倒。記者席の真下のボードにぶつかる衝撃音が聞こえた。

 大丈夫だろうかという気持ちと同時に、これでもう二人のメダルは厳しい、と咄嗟に思った。SPで5位だったアメリカのケネリム&フレイザーが、二人の前にノーミスの素晴らしい演技を見せて200点を超えていた。三浦&木原が表彰台に残るには、ノーミスは必須と思っていたのだ。

 だがその予想は、良い意味で覆された。

 三浦は素早く立ちあがると、スピン、そして続いたサイドバイサイドの3サルコウを着氷。2つめのスロウジャンプ、3ループもしっかり降りた。

 フリー135.57、総合208.20。まだロシア2組が残っていたが、メダルが確定した。

転倒した三浦の脳内には「隣にパートナーがいるから大丈夫」

 演技後ミックスゾーンに二人が現れると、木原がラスベガスの乾燥した空気で喉がくっつき、声が出なくなってしまったことを説明される。もっぱら三浦がコメントし、木原が耳元で囁くことを三浦が「通訳」するという形で取材が行われた。

 転倒の後、どのようにしてあれほど早く立ち直ったのか。

「自分自身、一度こけたらネガティブになっていくんですけど、スピンをしている間に今のミスを忘れて、つらかった練習を思い出して、自分なら大丈夫、隣にパートナーがいるから大丈夫と思って滑りました」

【次ページ】 「三浦さんは絶対立て直してくるって信じていた」

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