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“外れドラ1→最強打者”山田哲人と村上宗隆、苦労人・高津監督が見せた「ヤクルトらしい強さ」とは《2年連続最下位からセ制覇》
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKyodo News
posted2021/10/27 17:01
6年ぶり8度目のセ・リーグ制覇を成し遂げた東京ヤクルトスワローズ
高卒2年目の36本塁打も村上は「もっとやれた」
<名言2>
昨年(2019年)の成績に関しては、すべての面において“もっとやれたんじゃないのか、もっとやれるんじゃないのか”という思いは強く持っています」
(村上宗隆/NumberWeb 2020年8月27日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/844808
◇解説◇
ドラフトの「外れ1位」でスーパースラッガーになったという観点では、村上も同様だ。2017年のドラフト会議でヤクルトは清宮幸太郎の抽選を外し、次いで村上を指名する。巨人、楽天と競合したものの、ヤクルトは交渉権を獲得した。ルーキーイヤーはファームでじっくりと鍛え上げられて好成績を残しつつ、シーズン終盤の一軍昇格で初打席初ホームランを放ち、飛躍を期待させた。
翌2019年、村上は高卒2年目の選手として踏まえれば、十分すぎるほどの成績を残した。
全143試合出場、打率.231 36本塁打96打点。
新人王を取ったのも当然だ。何しろ本塁打数で村上を上回ったのは、ソト(43本)と坂本勇人(40本)だけ。同僚の山田(35本)やバレンティン(33本)、岡本和真(31本)、筒香嘉智(29本)、鈴木誠也(28本)と並み居る強打者を抑えての3位というのが、大きすぎる価値を持っている。
しかし、村上はポジティブな成績に満足感を持つことなく、リーグ最多の184三振、低い打率を「反省点」としてとらえる気持ちの方が大きかったのだという。実際、このシーズンまでチームを率いた小川淳司氏もこのように話していた。
「ホームランも、打点もプロ2年目としては立派な成績だと思います。でも、同時に多くの課題も見つかった。それは本人がいちばん理解しているはず」
2020年、村上は打率.307、28本塁打86打点をマーク。2年連続最多三振となったものの115まで減らすなど、打撃に確実性が増した。そして4年目の今季は優勝決定時点で全141試合出場、打率.283、39本塁打、112打点。二冠王の可能性を有し、MVPの有力候補と言ってよいほど、世代を代表する長距離砲へと成長したのだった。
なお山田と村上は今夏の東京五輪でそれぞれ準決勝の韓国戦、決勝のアメリカ戦で殊勲の一打を放ち、侍ジャパンの金メダル獲得に貢献している。その勢いに乗ってリーグ制覇を成し遂げたことも特筆すべきことだろう。
「絶対大丈夫!」をキーワードに
<名言3>
真剣勝負が好きなんですよ。やるかやられるか、ピリピリする感じ。
(高津臣吾/Number775号 2011年3月24日発売)
◇解説◇
「絶対大丈夫!」
最後まで混戦だった2021年セ・リーグ終盤戦、ヤクルトにとって心のよりどころになったキーワードだ。
言葉の主は高津監督だった。9月の天王山、阪神との3連戦を前にしたミーティングで発した一言が、チーム全体の士気を高めたという。19年、そして高津監督の就任初年度である2020年と2季連続最下位だったチームが、ここまでの変わり身を見せるとシーズン開幕前に誰が予想しただろうか。
そんな高津は91年ヤクルトに入団し、伝家の宝刀シンカーを武器に4度の日本一に貢献。日米通算313セーブと球史に残るクローザーだ。それとともに04年からホワイトソックス、メッツでプレーし、ヤクルトに復帰。07年オフに自由契約を通告されたが、現役続行を求めて韓国球界へ。09年はサンフランシスコ・ジャイアンツとマイナー契約を結び、10年は台湾リーグ、独立リーグの新潟アルビレックスでもプレーするなど、苦労しながらも勝負の舞台を求め続けた。