小川はグループリーグこそ点を取れなかったが、準決勝のメキシコ戦では同点ゴールを決め、決勝ではそれまで無失点だったブラジルからゴールを決めた。だが、コパ組との序列をひっくり返すまでに至らなかった。

「インパクト大というわけじゃなかった。忘れられていた小川航基が『まだいたんだ』ぐらいのニュアンスだったと思う。自分でもこれじゃ何も状況は変わらないし、1大会で2点取ったぐらいじゃ評価も上がらないと思っていました」

自分が出た試合では必ず点を取って東京五輪に行く

　それでもこの後に、小川はEAFF E-1サッカー選手権2019に出場する日本代表に選ばれ、ハットトリックを決めるなど得点王に輝いた。東京五輪に出場するチームに生き残るため、最後の戦いに臨む準備は整った。

EAFF E-1サッカー選手権2019に出場する日本代表に選ばれ、ハットトリックを決めるなど得点王に輝いた　©Getty Images

　2020年のシーズンインに当たり、小川はある覚悟を決めていた。

「僕は、J2だったので、J1に出ている選手と同じ10点を取っても勝てないと思っていました。同じスコアではダメで、その倍は取らないといけない。自分が出た試合では必ず点を取って東京五輪に行く。そのくらい強い気持ちでシーズンに入りました」

　だが、開幕後、コロナ禍の影響でリーグ戦は中断。東京五輪も1年延期が決定した。国際試合はすべて中止になり、アピールする場は再開したリーグ戦だけとなった。翌年の東京五輪を戦うためには、シーズン前に決意したように、誰もが納得するような結果を出さなければならない。小川は相当の危機感を背負ってプレーした。

「そのシーズンは最終的に9得点で終わりました。最低でもその倍は取らないといけないと思っていましたし、薫（三笘）が二桁得点、二桁アシストをしてすごい活躍をしていたので自分ももっと頑張らないといけないと思ったんですが……。監督が期待する結果を残し切れなかった」

残されたチャンスは“開幕からゴールラッシュ”のみ

　小川の中で焦りが募り、危機感が膨張した。2021年、東京五輪イヤーになり、小川に残されたチャンスは開幕からゴールラッシュで結果を出し、調子の良さをアピールすることしかなかった。

　そして、それを実現するチャンスを得た。小川は、J2リーグ開幕戦の琉球戦でのスタメンを勝ち取ったのだ。

「スタメンで出られたのは良かったです。でも前半で交代になってしまい、次の試合からはスタメン落ちして、それから（スタメンに）戻れなかった。初戦で点を取れればスタメンに定着できると思っていたんですけど……。ここぞという勝負どころで結果を出せなかった。この時は自分の力不足を感じましたし、悔しかったですね」

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