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「11年W杯メンバーは小中学生まで男子のスピードの中で…」長谷川唯が旧知のコーチと語る女子サッカーの“フィジカル”問題
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph byGetty Images
posted2021/10/19 06:00
今季からイングランド女子スーパーリーグのウェストハムでプレーするMF長谷川唯。10月3日にはマンチェスター・シティ相手にリーグ初ゴールを奪った
長谷川 海外のFWとの体格の差もトレーニングで埋めていけると考えますか?
津越 もちろんナチュラルな素材も大事だけど、適度な年齢から筋トレを積み重ねていけばある程度までは可能だと思う。
ポストプレーヤーとしてボールを収められる選手の条件として、体の強さだけではなく、技術など複数の要素が絡む。無酸素能力を評価するテストにおいても、最大パワーに到達するのに、男子と女子選手との差があるという結果が出ている。でも、もし反応を0.1秒でも縮められたら、到達点まで行くのが早く、ボールを受ける時間が作れる。ジャンプ系など瞬間的に最大パワーを発揮するトレーニングは、女子の場合はより有効性が高いと考えていて。そういったアプローチで物事を考えるのも1つの手じゃないかな。
長谷川 なるほど。ちなみに……小さい頃から縄跳びトレーニングを継続してるんですが、どう思いますか?
津越 縄跳びはめちゃくちゃオススメ。ジャンプ力の強化だけでなくて、瞬間的なスピードもつくから、特に体格が小さめなアジア人には合っていて。韓国では男女問わず幼少期から日常的に縄跳びトレーニングを取り入れていたりもするよ。
長谷川 ですよね! 縄跳びの良さをずっと伝え続けているんですが、ベレーザでもみんなやってなくて。こっちに来てチームでもアンクルホップはトップクラスなんですが、たぶん縄跳びのおかげです。スピードもつくし、子供が出来たら絶対縄跳びさせます(笑)。
津越 頑張れ(笑)。次のW杯でもパリ五輪でも唯はチームの中心として引っ張っていく立場になると思うけど、自分の経験や感覚を若手にどう伝えていこうと考えている?
フィジカルの大切さを痛感した東京五輪
長谷川 私自身背が低くて、常にそこをどうカバーするか考えてプレーしてきました。若い世代は本当にフィジカルの高い選手も出てきていて、彼女たちが代表に来た時に、その基準のフィジカルだけで通用させてはいけないな、と個人的に思っています。海外の基準も考えてやらないと、これから先は通用しないということも自分のプレーで見せていくつもりです。
今回の五輪でフィジカルの大切さが身に沁みました。もちろん人によって合う、合わないもある。それをやる、やらないも個人の判断ですが、私としてはしっかりと伝えていきます。フィジカルだけで勝負させないのも日本やスペインの良さですが、努力でできるところまでは上げていくことでサッカーの選択肢が広がる。それがチームとして浸透してくれば、日本の強みである駆け引きやポジショニング、技術で先手をとっていけるんじゃないかな、と思っています。
津越 基本のフィジカルベースを上げて、日本のプラスアルファが出せれば結果は変わってくるという期待感もある。そういった意味でも、唯のイングランドでの経験を女子サッカーに還元して欲しいね。
――お二人とも長時間に渡りありがとうございました。
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