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《キャッチャー歴3年未満》花咲徳栄→中日ドラフト4位・味谷大誠 “悲劇の世代”がつないだ名門の「連続記録」とは
posted2021/10/16 06:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
ドラフトの順位、ポジション、出身チーム。肩書だけなら普遍的に見えても、現実では誰にでも色濃い背景が存在するものだ。
中日からドラフト4位で指名された高校生キャッチャー、味谷大誠もそのひとりである。
「自分も先輩たちに続きたいなって」
花咲徳栄の夏の埼玉大会6連覇が絶たれて間もない8月上旬。新チームの練習をサポートしていた味谷に高校卒業後の進路を尋ねると、はっきりと目指す道を教えてくれた。
「自分はプロに行きたいです。花咲徳栄は6年連続でプロに行っているんで、自分も先輩たちに続きたいなって」
連覇こそ止まってしまったが、花咲徳栄にはもうひとつの「連続」が存在していたのである。味谷がプロ入りすれば、高校では最長記録の中京大中京、愛工大名電、大阪桐蔭に並ぶ7年連続での指名が実現する。そこだけは、何としてでも継承したい――そんな強き意志が言葉にもこもっているようだった。
高校通算13本塁打。遠投は115メートルで、ピッチャーからのボールを受けてからのセカンドへの送球タイムは最速で1秒78。50メートル走は6秒2と、走攻守でバランスがとれた味谷は「ドラフト候補」としてリストアップされる存在だった。
そんな彼がプロにこだわるのは、自らの目標であり、恩返しの意味も込められている。
キャッチャーを始めたのは“高校から”
中学2年の2017年夏。大阪府出身の味谷は、全国の頂点に立った埼玉県の強豪校に感銘し「ここで野球がしたい」と、地元を離れる決断をしたという。大阪和泉ボーイズ時代から打撃には定評があったが、本人は「バッティングだけでしたね」と笑う。
「中学の時は空いているポジションに入っていた感じでしたね。ファーストを守ったり、外野をやったり。固定はされませんでした」
味谷が本格的にキャッチャーを始めたのは、高校に入ってからだった。適性をいち早く見抜いた監督の岩井隆が、少しだけ誇らしさを見せるように話していた。