濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
タイガー・クイーンに立ち塞がった“師匠”ジャガー横田と越中詩郎のヒップアタック…佐山聡が新技考案中、次戦は彩羽匠
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/10/16 11:01
10月10日、初めての男女混合タッグマッチにて、師匠であるジャガー横田と初対戦したタイガー・クイーン
道場で指導した感触も聞いてみた。パワー、スピード、あるいは頭脳。どんな部分が特に秀でているのか。
「それが全部なんですよ。教えたことをすぐにできる」
それは最大の長所であり、また課題でもあるとジャガーは指摘する。
「プロレスラーは難点を見せないようにして、いいところを伸ばすもの。タイガー・クイーンの場合は全部できるので、逆に中途半端になってしまう可能性がある。いろいろやりすぎると、お客さんも目が散ってしまうので。
だから、クイーンがこれからどこを伸ばすか。飛ぶだけでなく力もあるので、力技もいいのかなとか、いろいろ私も考えちゃいますね」
佐山はクイーンの新技を考えてもいるという。同時に「ここまでは初代タイガーそっくりに育ててきましたけど、今後は独り立ちというか、タイガー・クイーンのオリジナルのものを作っていかなきゃいけない。それは佐山先生もおっしゃってましたね」。
ジャガーが「(次戦で)潰してもらいたい」と述べた真意
ジャガーが語っていた「初代タイガーのクローン」は、あくまで過程の話だったわけだ。ではタイガー・クイーンの完成形が見られるのはいつ頃になるのか。ジャガーによると「1年以内には」。新人として考えると、かなり短い期間だ。だがそれが彼女の宿命だという。
「スタートの位置が高い(メインイベントで山下りなに勝利)ですから。そこから下げられない。普通の選手は徐々に上がっていくんですけど。そこは大変だと思います」
次戦もまた試練。10月21日のストロングスタイルプロレス後楽園ホール大会で、彩羽匠(マーベラス)との一騎打ちが待っている。女子プロレス界トップの1人である彩羽は長与千種の愛弟子。ジャガーの教えを受けたタイガー・クイーンとの対戦は女子プロレスの歴史を感じさせるものでもある。
「2人にはライバルになってほしい。ライバルがいて初めて成長できるので。私はクイーンの味方だし負けないでほしいですけど、見方を変えると(彩羽に)ここで潰してもらいたいという感じもあります」
すべてはジャガーの親心。大会に向けた記者会見では「年間ベストバウトになるような試合に」と期待も語った。次から次へと強敵と闘い、道場で努力を重ねるクイーンを見て、佐山は「昔の自分を見るよう」と語った。果たしてクイーンは彩羽とどんな試合を見せるのか。予測がつかないから面白いわけだが、ともあれ越中詩郎の次に彩羽匠と闘うというのはただごとではない。1年で完成形を目指すには、異次元のキャリアが必要なのだ。
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