並んでテレビのインタビューを受ける松川と小園の姿を眺めながら、半田監督はつぶやいた。

「小園がこういうピッチャーになったのは、松川がおったから。これから小園は独り立ちしてやっていかないといけない。それも楽しみですけどね」

　松川あっての小園だった。それは小園自身もよくわかっている。

「僕のことをコウが一番理解してくれている。ストッピングも本当に素晴らしいので、変化球も自信を持って、ショートバウンドを恐れずに投げることができます」

　松川は、ゴツイ体に強面というなかなか威圧感のある風貌だが、チームメイトの誰に聞いても、「とにかく優しい。心が広い」と言う。「人には優しくせえ」と父の倫久さんが幼い頃から言い聞かせてきた賜物だ。

　小園も、中学1年の時に「貝塚ヤング」で初めて出会った松川の第一印象は、「デカくて、いかつくて、怖い」だった。それが6年間バッテリーを組んだ今では、「優しくて、包容力がすごい。体も心も包み込んでくれる懐の深さがある」と、すっかり松川に包み込まれている。

©︎Noriko Yonemushi

「コウと出会ってなかったら…」

　だが優しいだけではない。ただ小園が投げたい球を投げさせるのではなく、松川は自分の考えをしっかりと小園に伝えてきた。小園は言う。

「コウと出会ってなかったら、僕はもっと独りよがりなピッチャーになってたと思います。コウと組んで、お互いのことを考えながらピッチングするようになりました」

　2人はイニング間のベンチなどで、配球に対する考え方を伝え合い、ずれがあればそれを解消する努力を続けた。

「コウから見えているものもあるし、逆に僕から見えているものもある。僕が『こう思った』という意見を言うと、コウも『俺から見て、バッターはこういう反応をしてたから、あの球は危ないと思った』というふうに考えを言ってくれるので、そこで僕は『なるほど』と思うことも多くありました」

　捕手目線の考え方を知ることで、小園の視野や考える幅も広がり、試合をコントロールできるようになった。

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