また、松川はマウンドに行って投手に声をかけるタイミングも絶妙だ。ピンチの場面はもちろん、投手がフッと気を抜いてしまいそうな時にさりげなく引き締める。

　例えばセンバツ1回戦の県岐阜商戦。3回無死一、二塁のピンチで松川はマウンドに駆け寄り、小園の肩を叩きながら、「初球だけは気をつけて、ここはしっかりギアを上げて思い切っていこう」と声をかけた。

　その後、バントと三振で2アウトを取ると、松川は再びマウンドへ。

「三振を取って、健太もホッとしていると思うので、そのまま行くんじゃなくて、『初球だけ絶対行かれないように注意していこう。ここはしっかり時間かけていいぞ』と言いました」

　先手先手でエースを導き、輝かせた。

県岐阜商戦でマウンドに駆け寄る松川　©Sankei Shimbun

「一緒に市立和歌山に行こう」

　逆に、小園あっての松川でもあった。

　中学時代、松川に捕手の楽しさを教えてくれたのが小園だった。「貝塚ヤング」では全国制覇を果たした。

「僕が構えたところに来るので、配球がやりやすいし、めちゃくちゃ楽しい。このピッチャーと一緒に甲子園で日本一を達成したいと思いました」

　だから、「一緒に市立和歌山に行こう」と小園を誘った。

　小園のすごさを知っているからこそ、「負けたら僕が悪い」と責任を背負ってきた。

　6年間バッテリーを組んできた2人は、グラウンドでもプライベートでも本当に仲がいい。

　昨秋は帽子のつばの裏に、「最高のバッテリー　勝利」と互いに書きあった。今春のセンバツではそれが「ニコイチ　日本一」になった。最後の夏の大会には、グラブの色を同じ黄色に揃えて臨んだ。

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