リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
ジョージア出身のGKが歩む鮮やかなシンデレラストーリー 5部でプレー予定がいきなりバレンシアの守護神に
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2021/09/29 17:04
ほとんど実績のないジョージア出身の20歳のGKが、今季のラ・リーガでサプライズを起こしている
ところが、入団後まもなく彼の境遇は一変する。
変えたのは他でもない、ママルダシュビリ自身だった。
ホセ・ボルダラス監督に呼ばれたプレシーズンで能力の高さを見せつけ、チームメイトやスタッフを驚かせたのだ。彼のプレーを細かくチェックし、すっかり気に入ったボルダラスは「こいつはうちのもの。Bチームに戻すのは諦めろ」と周りに伝えたという。
開幕戦でデビューし、ベストイレブンにも選出
運も手伝った。
第2GKのハウメ・ドメネクと、ボルダラスが正GKと考えていたヤスパー・シレセンが、続けて負傷。そのおかげでプレシーズンの2戦目に出番を与えられ、ボルダラスの信頼を改めて勝ち取ることに成功したのである。
地元ファンへの新チームお披露目式を兼ねたナランハ杯ミラン戦では、本来は3番手のクリスティアン・リベロを押しのけてピッチに立った。さらには、ヘタフェとの開幕戦でリーガデビューを果たし、同節のベストイレブンにまで選ばれた。
第2節にシレセンが戻ってきてからも先発を続けており、クラブは付随する85万ユーロ(約1億1000万円)での買い取り権の行使を早くも決めたと、報じられている。
「契約締結直後の写真撮影時、20歳の選手とは思えぬ自信を漂わせていた」
代理人がそう明かすママルダシュビリだけれど、こんな鮮やかなシンデレラストーリーの主役に自分がなるなんて想像もしていなかったに違いない。
とはいえリーガの厳しさが増すのはこれからで、早速彼は壁にぶつかっている。第5節R・マドリー戦と第6節セビージャ戦の失点時の判断ミスと、それに対する非難である。
精神的な強さも試される厄介な事態だが、見方を変えれば成長のチャンス。
速やかに乗り越えることができれば、ママルダシュビリの選手としてのレベルは一段階上がるだろう。