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「阪神園芸は神整備だし神対応なのか…」 前夜は雨→甲子園での試合当日朝に《職人の技》をじっくり見せてくれた
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2021/10/01 11:02
阪神園芸の神整備を目の前で見せてもらった
「朝起きた時は晴れていなかったので(整備スケジュールを)どうしようかと思っていたんですが、出勤して作業を始めたら晴れてきた。だから、ちょっと安心して進められるかなと思いながら今日は始めたんですよ」とのこと。
結果的に“夜中だけ雨が降ってくれた”ことにより、万全のグラウンドコンディションを作り上げる阪神園芸の技術を目の前で見られる僥倖を得られたのだ。
グラウンドに入ってからの判断が大きいんですよ
30年超のキャリアを積み上げてきた金沢さんは「どうぞ」と優しく三塁側ベンチに招き入れてくれると、さっそく「阪神園芸の1日」について教えてくれた。
「例えば今日のようにナイター開催の日だと、出社時間はだいたい朝9時半頃なんです。そこからだいたい12時頃まで作業します。昼休みに関しては選手の皆さんの練習開始時間に合わせて、11時半から12時半まで……その後、練習に向けた準備といったスケジュールにすることもあるんですよ」
驚かされたのは、時間配分に対する柔軟性の高さだった。自分たちが作業する最優先事項はグラウンド、そして試合に臨む選手のためという意識が徹底されていた。金沢さんはこう続ける。
「グラウンドに入ってからの判断が大きいんですよ。やっぱり太陽が出ているか出ていないか、それによって乾き方が大きく異なるので、時間の使い方も変わってきます。外野の芝刈りについても9時半くらいにして、その後に水やりや手入れをしています」
ここからウェイティングサークルで待つバッター、時には審判になったような視点で、阪神園芸の“スゴい仕事ぶり”を……カメラに収めつつ、じっくりと見せてもらった。
職人オーラ漂う10人ほどが台車やスコップを相棒に
作業に携わるのは10人ほど(後に金沢さんも実際にグラウンド整備に加わっていた)。土を入れるための台車やスコップを相棒に、強い日差しの中で、農作業のように土や芝の状態を見極めている。年齢的には20~30代後半が大半だが、熟練した職人オーラをビシビシと感じるたたずまいだった。
「右バッターボックスのこの辺、少し調整しておきたいね」
「ですね、しっかりと僕らが作っておきます」
こんな会話をかわしつつ、ホームベース付近に砂を入れたり、しっかりと踏みしめていく。確かベンチで金沢さんのお話を聞いているときにも、グラウンドキーパーの皆さんは相当整備していた。すでにその時点で40分以上は経っているし、筆者が球場入りする前からグラウンド整備をしていたとのことだから……ゆうに1時間以上はかかっている。