同じく大関貴景勝も、カド番でやっと勝ち越し。でも、初日から3連敗したのに、よく勝ち越したね。首のケガの状態が心配されていたけれど、勝っていけば痛みも忘れるし、だんだんと体にいい”流れ”が出てくるものなんだよね。首のケガの程度もあるけど、怖がらずに頭で当たる稽古をしたほうがいい。 とにかくぶつかり稽古をガンガン！　ね。

　阿武咲や大栄翔も今場所はいい相撲が多く、盛り上げてくれたな。御嶽海は、照ノ富士戦に「秘策がある」と言ってたけど、結局対戦成績6連敗でいつもと同じ負け方。ビッグマウスで終わっちゃった……。いつも差して負けるんだから、「次はどうしようか？　押して行くか？　どうやって押そうか？」と、もっと頭を使って考えないと。大栄翔は押し相撲が巧いから、押し方を教えてもらえ！　御嶽海はまだ28歳と若いんだから、まだまだ上を狙えるはず。もったいないよ。

　今場所、10勝を挙げたベテランの隠岐の海。僕が部屋付き親方時代、当時の武蔵川部屋に出稽古に来ていたけど、右四つ左四つでも取れる”ナマクラ四つ”で、なんだか「テキトーなヤツだなぁ」と思っていたんだよね（笑）。若い頃から自分の型を持っていなかったのが、伸びない原因だったと思う。相手に合わせて相撲を取れちゃうからなんだ。相撲センスがあるし”相撲力”も持ってる。もし若い頃からガンガン自分の型を作って磨いていたら、この地位にいなかったと思うよ。しかし、36歳と長く続けているのはエライ！　逆に今の相撲界のレベルが低いから、これだけ長く取れるとも言えるんだけどね。

　今場所は優勝争いも最後までわからず、それぞれのお相撲さんにいい相撲もあった。みんな、お疲れ様でした！　「コロナ禍で稽古不足」と言われるけれど、それを逃げ道にしちゃいけない。出稽古はできなくても、四股やすり足などの基本動作を徹底的にやり、部屋の若いお相撲さんを相手に50番でも60番でも相撲を取れば、筋力も相撲勘も衰えることはないんだから。場所後の1週間の休みはゆっくりして、11月の九州場所で、またいい相撲を見せてほしいな。　

（構成＝佐藤祥子）