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開幕5戦未勝利のフランクフルトで鎌田大地が見せた新たなスタイル 指揮官も「あれほどプレーインテリジェンスのある選手は稀だ」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/09/25 17:01
開幕から苦しむフランクフルトにおいて、鎌田は攻撃の軸として大きな期待が寄せられている
ヴォルフスブルク戦では厳しい声も
そんな鎌田は、これまで以上にチームを引っ張る主軸としての働きが期待されている。だからこそ、ヴォルフスブルク戦で試合の流れを変えるプレーができずに批判が集まった。得点の場面ではCBマルティン・ヒンターエッガーからのパスを相手MFの裏スペースで上手く受けて、左サイドへ展開したところが起点となった。
だが、それ以外では目立った活躍があったとは言えず、地元紙からの評価も「間違った判断ばかりになってしまった」「得点に絡む仕事ができていない」と厳しかった。
ボールには絡んでいて、さすがと思わせるプレーもあった。
とはいえ、決定機を演出するところまでは持ち込めていなかった。攻撃陣に新加入選手が多く、まだ呼吸が合っていないのは確か。連続未勝利とあって、チームとして躍動感が出にくくなっているのも確かだ。
しかし、そうした状況であれ力を発揮し、違いを生み出し、多少強引にでもチャンスを作り出す働きができる選手こそが、主軸として称えられる。そうした選手がいるチームが、リーグでも上位へと食い込んでいける。
「あれほどプレーインテリジェンスのある選手は稀」
グラスナー監督は、シュツットガルト戦後の会見ではっきりとした口調で鎌田のことを次のように評していた。
「あれほどプレーインテリジェンスのある選手は稀だ。ダイチはどこに危険なスペースがあるか嗅ぎ分けることができる。バリエーション豊かで、フレキシブルに起用できる。とても重要な役割を果たしてくれるはずだ」
第5節を終えて、フランクフルトの順位は15位。納得のいく位置ではない。代表選手が多いだけに、代表中断期にチームトレーニングを積むことができず、ヨーロッパリーグもあるため週中の練習は休養に充てられることが多い。
そのため、試合の中でチームプレーを熟成させていかなければならない。そう考えると、試合を重ねるごとにチームプレーの向上が見られ、選手間の共通認識が明確になっているのはポジティブな要素だろう。
「今後も、将来的にいい成績が出るように取り組んでいくまで。我慢強く、力強く」
グラスナー監督はそう語っていたが、チームを飛翔させるためのきっかけは間違いなく勝利だ。鎌田のひらめきと一撃が相手ゴールをこじ開けてくれることを、フランクフルトファンは、手をぎゅっと握って祈っているはずだ。