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「日本はまだメッシやサラーを買えるに至っていないが…」オシムが語る欧州サッカーの新潮流と日本の可能性とは
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/09/23 06:01
2007年、日本代表監督時代のオシム。今年80歳となったが、その舌鋒はいまだ鋭い
だが、今、面白いのはそういうことで、メッシを獲得できるクラブは、メッシのために走る選手も獲得できる。別のメッシも獲得できる。その選手たちはサポーターグループを喜ばせるだろう。クラブには様々なグループがある。財政を支援するグループや、サッカーそのもののサポーターであるグループ……。資金が潤沢であれば好きな選手を買える。チームは必然的に国際的になる。そうなることを私は待っている。日本のあるクラブが、日本人への贈り物として……」
――メッシのようなビッグスターを買うということでしょうか?
「まあ聞け。日本はまだメッシやサラー、レバンドフスキを買えるには至っていない。知性から何からレベルを卓越した選手たちだ。そこは間違いないが、少しずつだが着実に近づいている。このままこの道を歩み続ければ、やがて(ヨーロッパの)競争相手になっていくだろう。もちろんそこに至るまでには、少なくともW杯をもう1度は経なければならない。というのもヨーロッパのクラブは、日本のクラブに選手を売ろうとはしないからだ。ドイツにせよイングランドにせよ、自分たちの選手を保持し続けようとする。だからこそ彼らのリーグは素晴らしい。
日本のトップクラスの選手たちがイングランドで活躍する日もそう遠くはないだろう。ヨーロッパでプレーする日本人は着実に増えている。
ビッグクラブに所属する最も高額な最高の選手でも、プレーがよくなければ常に誰かにとって代わられる可能性がある。別の選手を買う選択肢が生まれ、それが市場の現実でもある。あと数日の間に、市場がどう動いていくかよく見てみよう」
進歩の陰にある課題
――でも例えばバルセロナは……。
「君が理解したかどうかわからないが、私はそう思っている。メッシはひとつの事例だった。他の選手たちにも同じことができると思わせたという点でそうだった」