さらに公開練習で、ぱんちゃんは「RIZINで近いうちにできたら」と寺山の名前を出した。ファンからも対戦を望む声が多く、以前から意識はしてきた。やるなら中立のRIZINがベストだろうという考えもある（那須川天心や白鳥大珠など、RISEからも多くの選手がRIZINに参戦している）。

　寺山は「組まれればやります」というスタンス。たとえば大晦日に対戦が実現すれば大きな話題になるはずだが「ジャニーズカウントダウンが見れそうなら見ますし」といった感じだ。決して前のめりにはなっていない。今の寺山にとって最大のテーマは、ホームリングであるRISE女子大会を大きくすることなのだ。まして彼女が見ているのは那須川天心の背中。誰と闘いたいというより、まず自分が強くなることに集中している。今回の小林戦にしても、勝ちはしたが課題は多かった。

　3階級でタイトルを制定、ビッグマッチで試合が組まれ、女子大会もあるRISE。一方、KNOCK OUTの女子部門はぱんちゃんが1人で引っ張ってきた。強豪がRISEに集まる中で「ぱんちゃんと闘いたい」と他の選手たちに思わせるだけの強さと価値を示す必要があったのだ。それは焦りにも似た感情で、だから常に「もっと強い選手と闘いたい、ベルトを持っている選手とやりたい」と言い続け、時には団体スタッフを苦笑いさせた。人気があるとやっかみも増える。自分の力で雑音を封じたかった。

　そんなぱんちゃんがRIZIN出場という、キャリアの転機にもなりうるチャンスを得た。いい勝ち方をして地上波中継でもフィーチャーされれば、それこそ人生が変わる。そんな状況で、気持ちが逸っての寺山戦アピールだったのだろう。

女子キックの歴史は今まさに動いている

　寺山日葵vs.ぱんちゃん璃奈がRIZINで行なわれれば、女子キックが今以上に話題になるのは間違いない。ただRISEの伊藤隆代表は、RIZINではなくRISEでも実現可能だとした。

「ぱんちゃんには以前もオファーを出してますし、ウチはウェルカム。RIZINでなければできないわけではないと思います」

　現時点で、まず何よりも重要なのは9.19RIZINでのぱんちゃんvs.百花だ。1戦ごとに成長を見せているぱんちゃんだが、百花もRISEのトーナメントに参戦した日本屈指の強豪。単純に考えて、ぱんちゃんにとってはキャリア最大級の試練だ。ここを乗り越えなければ大晦日も寺山戦もない。百花も「ぱんちゃんRIZINデビュー戦の相手」で終わるつもりはないだろう。

　ともあれ、女子キックの世界に“役者”が揃ってきた感はある。寺山、ぱんちゃん、猛追するAKARI。小林もこのままでは終わらないだろう。ベテラン・紅絹に勝ってRISE女子アトム級王者になった18歳、宮崎小雪も見逃せない存在だ。K-1／Krush戦線では、菅原美優vs.MIOのKrush王座戦が決まった（11月20日、後楽園ホール）。

　女子は男子に比べれば“越境対決”のハードルも低いと言う関係者もいる。取材してきた感触を言えば、選手も関係者も、誰も逃げるつもりはない。彼女たちの存在をより“世間”に伝えるための舞台とマッチメイクをみんなが考えている。

　今は女子キックの歴史が大きく動いている最中で、その中の大きなポイントとして寺山vs.小林に続いてのぱんちゃんvs.百花がある。2週連続の大一番、ここでまたジャンルの熱が高まることになるはずだ。

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