医療について学んだことはなかったし、家族にも医療関係者はいなかった。それでも父の言葉に導かれるように看護学校に進む。いざ始めると、印象は変わった。

「看護学校はとてもハードでした。でも患者さんとかかわることに楽しさややりがいを感じるようになって、『この仕事は向いているな』と感じました」

　卒業すると、総合病院に勤務する。

「希望していたのは手術室でした。テレビで観たときのイメージと、実習でのやりがいからです」

　希望通りとは行かず、消化器外科に配属された。そして勤務するかたわら、ボクシングを始めた。

「2018年の頃です。職場の同期と夏休みにハワイに旅行に行く計画を立てていました。でも看護師になってからすごく食べてしまって、すごく太っていったので、ハワイに行くならもっと痩せなきゃ、とダイエット目的でボクシングジムに入りました」

公式戦初出場が全日本選手権、そして優勝

　競技として始めたわけではなかったボクシングでの転機は、入会して2、3カ月を経たときに訪れた。

「ジムの対抗戦でスパーリング大会に出場しました。相手の選手は全日本選手権に出ているような上位の方でした。負けてしまったけれど結構やれたんじゃないかという手ごたえがあって、頑張れば全日本選手権の上位に行けるんじゃないかと思いました」

トレーニングを行う津端　©AFLO

　それまでもトレーナーから「選手をやればいいのに」と声をかけられていたという。

「バスケットをやっていたおかげで、ステップワーク、パンチを出すリズム感、体の使い方がうまくできていたんじゃないかと思います」

　初めての公式戦は2019年10月の全日本選手権。津端はミドル級で優勝する。トレーナーの目は間違いではなかった。「格闘技は初めて」であっても、子供の頃から外遊びが好きで男子に混ざってサッカーをしたりするほどスポーツが好きだった土台もあっただろう。

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