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リーガ昇格組だが“降格候補”ラージョの39歳指揮官は《新たな名将》となるか「監督は誤りを犯しながら学んでいく」
posted2021/09/12 17:01
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
ラージョ・バジェカーノを率いるアンドニ・イラオラ監督は、現役時代「頭の良い選手」と評されていた。メディアの取材を受けた幼馴染は、勤勉であることも強調していた。
アスレティック・ビルバオ時代に彼を配下に置いたことがあるホアキン・カパロース(現アルメニア代表監督)は、こんな逸話を明かしている。
「対戦相手のラインアップがわかると、いつも真っ先に質問してくるのがイラオラだった。全チームの情報を漏れなく頭に入れていたから、みんな彼の意見を完全に信用していた」
そんなイラオラのこれまでを振り返ると、彼には他にも特徴があることに気付く。挑戦を好み、恐れないことである。
例えば2014-15シーズン終了後のアスレティック退団だ。
元々、イラオラは監督に興味がなかったが
クラブからは契約延長を求められていた。公式戦出場数は歴代4位(510試合)に達し、サポーターにも愛されていた。強く望めば引退まで居座ることだってできたであろう。
ところがパフォーマンスの低下を自覚していた彼は、アスレティックでは周囲の期待に応えづらくなったことを理由に、MLSのニューヨーク・シティFCへ移籍する選択をした。現役を退いたのは、それから1年余り経ったときのことだ。
監督という新しいキャリアも「挑戦」がトリガーになったようだ。
元々、イラオラは監督に興味がなかった。ライセンスを取得しようとはしていたけれど、近しい人たちには「実際やるつもりはない」と伝えていた。昨年受けたインタビューでは次のように語っている。
「監督という生き方を羨ましいと思ったことは一度もない。監督が楽しんでいる姿なんて見たことがない。いまや自分もその1人だけれど、あまり愉快な職業ではないと思う」
気が変わったのはアスレティック時代のチームメイトで、当時AEKラルナカ(キプロス)のスポーツディレクターを務めていたムリージョに誘われたからだ。