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リーガ昇格組だが“降格候補”ラージョの39歳指揮官は《新たな名将》となるか「監督は誤りを犯しながら学んでいく」
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2021/09/12 17:01
昇格組だが戦力的には“降格候補”のリージョ。39歳のイラオラ監督に要注目だ
「経験のない彼にチームを託すなんて、危険な賭けだと思われたかもしれない。だけど、イラオラの性格や監督としてのアイデアを知っていたので難しい決断ではなかった」
「監督は誤りを犯しながら学んでいく」
意気に感じたイラオラは、2018年6月にライセンスを手に入れると「自分を試すために」キプロスへ飛んだ。
半年後、連敗のせいで解任されたものの、スーパーカップ制覇やクラブ史上2度目のELグループステージ進出は成し遂げており、「監督は誤りを犯しながら学んでいく。それを早い段階で経験すると、成長も速くなることがわかった」と後にコメントしている。
自身の資質と監督としての可能性を確認してスペインに戻ったイラオラは、次に2部に昇格したばかりミランデスを率いた。目標だった残留を難なく達成し、国王杯ではセルタ、セビージャ、ビジャレアルを次々と退けてベスト4入りを果たした。
当然、契約延長を持ちかけられた。が、彼は固辞した。監督は遅かれ早かれ解任される運命と考えているイラオラによると、「契約が切れるタイミングは、解任されることなくそのクラブを去るチャンス」なのだそうだ。
給与未払い問題があってもラージョの監督になった
そうして迎えた昨年の夏、イラオラは同じ2部ラージョの監督となった。給与未払いが大きな問題になっていたが、それ以上の魅力を大都市マドリーの一角に根付くラージョ・バジェカーノという小クラブに感じていた彼は、怯むことなく「自分のキャリアにとって重要な挑戦」に取り組んだ。
その結果、昨季のラージョはボール保持率、敵陣内にボールを留めていた時間、ボールを失ってから取り返すまでの早さ、敵陣内でのボール奪取数、センタリング数、シュート数のすべてが2部最高レベルとなった。
どんな展開になっても選手たちは気を緩めないので、国王杯バルセロナ戦とプレーオフ決勝ジローナ戦の第1レグを除き、先制した試合は負け知らずだった。
1部昇格はその帰結である。