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「先輩にもここにいてほしかった…」見延和靖(34)が明かす、絶対に“エペ団体で金メダル”を獲りたかったもう1つの理由
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byGetty Images
posted2021/09/09 11:01
金メダルという大きな目標を達成した見延和靖(34歳)
果てしない大きな夢を叶え、その功績に所属するNEXUSの星野敏代表から「1億円」という破格の報奨金が送られた。
4名が出場した団体戦において、1選手だけに対して所属先から与えられる破格のボーナスに疑問や異論を唱える人がいるかもしれないが、そこには理由が存在する。
NEXUSの星野代表は学生時代フェンシング選手として活躍。全日本選手権を制した経験も持ち、フェンシング競技の普及、強化を掲げ、14年から15年まで日本フェンシング協会の会長も務めた人物だ。そもそも09年にフェンシング部を設立した背景には、選手を社員として雇用し「フェンシングで飯が食える選手を育てたい」という思いがあり、エペで世界を制することがどれほど困難かも熟知している。
「この金メダルがそれだけの価値あるものだと評価していただいたのは、とても嬉しいです。他の3選手にも報告したら『すごいっすね』とか、『モチベーションになります』と。税金で半分持って行かれますが(笑)、フェンシングだけでなく、他のスポーツ選手に夢を与えられたなら、それも嬉しいです」
数々のメディアにも引っ張りだこで、パラリンピック閉会式では日本国旗のベアラーまで務め上げた。東京五輪で得た経験や報奨金をフェンシング界のために役立てたいと考えながらも、次々と変化する現実に面食らっているのか、まだ先のことを考える時間も余裕もない。
ただ、確実に願うことは1つだけ。金メダリストになっても成し遂げていない夢を叶えることだ。
「僕の最終目標は、史上最強のフェンサーになること。今までそういう選手が(世界を見ても)エペでは出ていないのでかなり難しい挑戦ではありますが、可能性はあると思うんです。五輪で勝ち続けるような絶対王者が出ていないのは、完璧にエペを理解した人が未だにいないということでもあり、まだ誰も知らないエペの極意がきっとある。それを最初に見つけさえすれば高みに到達できると思っているので、これからも手探りに1つ、1つ試しながらやっていこうと思います」
不可能を可能に変える。無理なことなど1つもない、とまた証明していくだけだ。
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