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50歳で金メダルは史上最年長! パラ自転車・杉浦佳子“遅咲きエース”の前向きすぎる生き方に香取慎吾もびっくり!?
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama/Asami Enomoto
posted2021/08/31 11:10
リモート取材となったが、競技の魅力は香取慎吾に伝えた杉浦佳子
香取 初めてのレースだったんですか?
杉浦 2度目でした。1回目は参加してる人が少なかったので優勝できたんですけど、2回目に出てみたら速い選手がいっぱいいて、一生懸命そこに付いていった途中で転倒してしまったんです。
香取 事故のあと、もう一回自転車に乗ろうってすぐに思えたんですか。僕だったら、怖くなっちゃいそう。
杉浦 よく聞かれるんですけど、転んだときの記憶が全くなくて。レースが始まる前に友達と頑張ろうねと言い合っていたところが事故前の最後の記憶です。病院でも自覚がなくて、身体に繋がっていた管を全部抜いて、ICUから抜け出したようで。
香取 えーー!
杉浦 「宮古島までトライアスロン大会に行かなきゃ」って言って倒れてたそうです。その時の記憶も全くないんですけど(笑)。
香取 じゃあ恐怖を克服とかじゃなくて、記憶がないから事故前の続きで今も乗ってるんですね。今も自転車はお好きですか?
杉浦 帰国後の隔離中なので、今日で5日間自転車に乗っていないんですけど、こんなに乗らないのは復帰してから初めてかもしれない。ちょっと気持ち悪いです。
香取 それはアスリートだから? それとも好きだからこその感覚ですか?
杉浦 うーん……たぶん“仕事”と同じだと思うんです。仕事が嫌だなと思っても基本的に毎日行くし、もしクビになったらすごく悲しいじゃないですか。私は毎日コーチから練習メニューをもらうんですけど、それがなくなったら何をしたらいいかわからないかもしれない。もちろんオフは嬉しいですけど、毎日毎日だと絶対に辛い。私にとっての日常というか、居場所ですね。
香取 今、その辛さを味わってるんですね。
杉浦 手元に自転車がないので、さっき仰っていたドラマの主人公じゃないですけど、飾って見るぐらいはしたいな(笑)。
自転車の一番の魅力とは?
香取 僕、自転車の魅力が全然わかっていないんですけど、何がグッとくるんですか。
杉浦 ……本当に苦しい時はやめたいって思います。でも、それを乗り越えたときの達成感が一番、かな。なかなかできなかった練習、例えばトラックを「19秒5以内で12周」というメニューを設定通りこなせたときの気持ちよさは何にも代えがたい。香取さんもダンスとか、そうじゃないですか?
香取 そう! 今まさにダンスを思い出していました。4月に明治座で1カ月間初めてのソロ公演をしたんですけど、1時間半、踊りも歌も一人だからずっと自分の番なんですよ(笑)。グループのときは、1フレーズ歌うと自分の番まで休めたけど、そうはいかない。笑顔で歌いながらも必死で、マイクを捨ててしまいそうなギリギリのところで、最後の決めポーズをした瞬間の気持ちよさがきっと今杉浦さんの言ってた達成感なのかなって。日々の公演が終わってスタッフとお疲れさまって交わすときとか。
杉浦 わかります! スタッフとの関係も、自分を競技に繋ぎとめてくれているものですね。私は特に遠征での飲酒は禁止なんですけど、世界選手権で優勝した帰り、スタッフが「俺の作ったバイクでアルカンシエル(優勝者に与えられるジャージ)を獲ってくれるなんてこんな嬉しいことはない! 栄養士には俺が言うからこれを飲め!」ってビールを奢ってくれたことがあって(笑)。喜んでくれているんだと嬉しかったです。