胸のつかえを吐き出した清水に、SAKIは「私はメインと思って試合してたよ」と言う。シングルとタッグ、試合順で価値が上下するとは思っていない。いつでも自分の試合がメインイベントのつもりだ。それに、今回は何よりも清水の五番勝負の相手を務めること、後輩とタイトルマッチをすることが大事だった。

　清水が悔しさを感じたのは、プロレスラーとして成長し欲が出てきたからこそだ。SAKIは清水にさらなるチャンスを用意する。その日のうちに関係者に直談判し、プロレスリングWAVEのタッグ王座挑戦を決めたのだ。清水にとっては、五番勝負を終えて一息つく間もなく次の大一番が決まったことになる。

試合後、涙が止まらない清水にSAKIは寄り添った

カケミクに敗れた本間「プロレスは私から諦め方を奪ったので」

　メインも先輩と後輩の闘いだった。タッグ王者チーム・SPiCEAP（スパイスアップ）の本間多恵と尾崎妹加は2015年デビューの団体1期生。挑戦した関口翔（かける）と青野未来（みく）のKKMK（カケミク）は五十嵐、清水と同年デビューの“2017年組”である。このカードは初代王者決定トーナメント決勝のリマッチでもあった。

　試合のポイントになったのは尾崎と青野のマッチアップだ。尾崎は現在フリー、一度は後にした古巣に“里帰り”して同期の本間とベルトを巻いた。だからこそ防衛したかった。持ち味は高校時代に全国優勝したウェイトリフティング仕込みのパワー。青野は、そんな尾崎とラリアットの打ち合いを展開するなど真っ向から張り合った。ジャーマンスープレックスで投げ切るとフィニッシュはバックドロップ。正面突破と言っていいタイトル奪取だった。

　関口は青野のサポートに回った。前回、ギブアップ負けした青野が「次は自分が取りたい」と何度も言うのを聞いていたからだ。後楽園大会は団体最大の舞台。そのメインのタイトルマッチで、関口は自分よりもパートナーの気持ちを優先させたということだ。そこにカケミクの強さがあるのかもしれない。

メインは本間・尾崎vs.関口・青野。カケミクが正面突破とも言えるタイトル奪取を果たした

　試合後は4人とも泣いていた。後輩の成長を受け止めた尾崎はこう言っている。

「凄く悔しいです。ただカケミクはこのベルトを獲るために、私たちを倒すために頑張ってきたんだなって。そう思うと嬉しいです。でも悔しい......」

　後楽園での大一番に合わせて負傷欠場から復帰した本間は「チャンピオンではなくなったけど、私たちはこれから何者にでもなれる。まずは挑戦者に」と涙が止まらないまま意気込んだ。

「プロレスは私から諦め方を奪っていったので。諦めるとかそういう言葉は、私の中に一切ありません」

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