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〈退任する監督へ…〉近江に敗れた日大東北の“4番エース”が、雨天ノーゲームや「悲劇の3球負傷降板」よりも悔しかったこと
posted2021/08/21 17:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
KYODO
日大東北にとっては、災難続きの甲子園だったのかもしれない。
本来ならば近江との初戦は13日のはずが、雨に祟られ19日まで伸びた。その待望の試合も、5回裏まで0-1と想定内の最少ビハインドで試合を運びながら、降雨ノーゲームにより仕切り直しとなった。
そして迎えた20日の本番も、日大東北にアクシデントが襲った。
まず、試合直前に天候不良の見込みがあるとされ、開始時間が予定の8時から9時に変更となった。そして日大東北にとって最大の不運は、試合開始直後に起きた。
宗像忠典監督が「チームの大黒柱」と全幅の信頼を置くエースで4番打者の吉田達也が、近江の先頭打者・井口遥希の強烈なライナーを右足に受け、わずか3球での降板を余儀なくされてしまったのだ。
スコアだけで判断すれば完敗だが……
「チームに動揺は走りました」
指揮官はこのアクシデントがチームに与えた影響を素直に振り返ったが、すぐに「それを感じさせないくらい選手たちは頑張った」と、労うように言葉を繋げた。
結果は2-8。スコアだけで判断すれば完敗だ。しかし、日大東北は大黒柱を失ってもなお、5回に一時2点差に迫るなど相手を脅かした。投手陣も3年生の星拳翔、1年生の堀米涼太、センターを守っていた馬場央典をつぎ込む総力戦で耐え、ゲームを壊さなかった。
頑張ったと選手を称える宗像は、チームの成長をこのように自信を持って訴えた。
「投手は吉田を軸に、堀米たち下級生も乗っかってくれた。野手も決して力強くはないが、松川(侑矢)を中心に諦めず、全員で繋ぐという姿勢が、試合をやるたびに見られたことが一番の成長かなと思います」