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ギリギリの膝で五輪を戦い抜いた清水邦広…“同学年の戦友”福澤達哉が「(五輪出場は)オレじゃなくて清水でよかった」と伝えた理由〈バレー〉
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2021/08/16 11:03
14日に行われた福澤達哉の引退試合で笑顔を浮かべる清水邦広。日本男子バレーの一時代を支えた2人の友情は厚い
ベネズエラ戦の勝利の後、福澤は「1勝おめでとう」とLINEでメッセージを送った。そしてこう添えた。
「北京世代の思いをすべて背負って、北京の借りを返してくれたから、これからは自分の挑戦として、自分のためにオリンピックを戦ってほしい」
清水からの返信はこうだった。
「福澤の分まで、思いを乗っけて打ってるからなー」
引退試合、涙声で福澤を送り出した
ネーションズリーグ後に現役引退を発表していた福澤の引退試合が、8月14日に行われた。
清水は、せめてもう1年一緒にプレーしようと、何度も引き留めたが、福澤は、パナソニックの社業でも何かを成し遂げるという、もう一つの夢へ踏み出すことを決めた。
引退試合後のセレモニーで、清水は、「本当はこれは言いたくないんですけども……、お疲れさまでした」と、涙声で福澤を送り出した。そしてセレモニーも取材対応もすべてが終わったあと、東京五輪で着ていた背番号1の代表ユニフォームを、そっと福澤に手渡した。
お互いに「福澤がいたから」「清水がいたから」ここまでやってこられたと口癖のように言う。だがこれからは別の道を行く。
35歳になっても「長くバレーを続けたい」
東京五輪閉幕後の8月11日に35歳になった清水の現役生活はまだまだ続く。
「僕の中では、今まで怪我でバレーボールをできなかった期間がめちゃくちゃ長かったので、その分、他の選手よりも長くバレーを続けたいという思いがすごく強くあるんです」
テレビ番組の対談で知り合った元サッカー日本代表・中山雅史さんの影響も大きいと言う。
「ゴンさんは30代で一度引退されたんですけど、現役復帰して、長く続けられた。以前、『現役を長く続けている理由はなんですか?』と聞いたら、『以前は30歳や20代後半で引退する選手が多かったけど、オレが長くやればやるほど、引退する年齢が上がっていく。それを上げたいからやるんだ』と言われました。ここまでできるんだぞという指標を示すんだと。
サッカー界にはカズさん(三浦知良)もいますし、野球界にもたくさんのレジェンドがいる。バレー界でも、今までは眞鍋(政義)さんや荻野(正二)さんなど長く結果を出してきた選手がいましたが、僕もレジェンドの1人になれるように、長くバレーをして、なおかつ結果を残していきたい」