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藤井聡太二冠は運転士になりたかったほど鉄道愛が深い… 高1の時に「青春18きっぷ」日帰り旅行、京急の「ドレミファインバータ」も好き
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟/JIJI PRESS
posted2021/08/15 06:01
タイトル戦続きの藤井聡太二冠だが、京急2100系の「ドレミファインバータ」に言及するなど、鉄道好きとしても知られている
「青春18きっぷ」を使って旅したルートは……
地元の愛知県から在来線を乗り継ぎ、中央本線の小淵沢駅(山梨県)に向かった。そして、一番の目的である小海線の観光列車「ハイレール」に乗った。
小海線は、山梨県と長野県にまたがる高原鉄道として知られている。標高の高い駅がいくつもあり、清里駅と野辺山駅の間の標高は、JR鉄道最高地点(1375メートル)である。
藤井は、八ヶ岳や南アルプスの雄大な峰々、のどかな高原の景色を、車窓から眺めて楽しんだ。
藤井たちは、小海線の佐久平駅で降りると、北陸新幹線で長野駅に行った。その後は、在来線を乗り継いで愛知県に帰った。約14時間にわたった日帰りの旅だった。
藤井がタイトル戦の対局で、新幹線や列車に乗る場合、すべてグリーン車の座席が用意される。それだけに、16歳の頃に安価な旅を経験したのはよかったと思う。
対局の合間につかの間の「乗り鉄」を楽しんでほしい
鉄道好きの人の中には、いろいろなタイプがいる。
鉄道の車両を撮影する「撮り鉄」、車両のメロディや駅のベルに関心を持つ「音鉄」、鉄道に乗って車窓から景色を眺める「乗り鉄」、数多くの駅で下車する「降り鉄」、各地の駅弁を食べる「食鉄」などがある。
中学生で棋士になって公式戦で活躍している藤井は、鉄道好きといっても時間に制約がある。王位戦の第2局で、北海道の在来線に乗って車窓から景色を眺めたように、つかの間の「乗り鉄」を楽しんでほしい。
なお、私こと田丸も「乗り鉄」である。仕事で地方に行ったときは、合間を見てローカル線に乗るようにしている。
私が以前に撮った鉄道と、将棋に関連する当地の話を紹介する。
写真は、和歌山線の橋本駅と高野山駅(いずれも和歌山県)を結ぶ南海電気鉄道の車両。2013年に高野山の金剛峯寺を訪れるために乗った。
戦後まもない1948年に、同じ門下の兄弟弟子である升田幸三八段と大山康晴七段が、名人戦の挑戦権をかけて3番勝負を争った。その対局場が金剛峯寺で、「高野山の決戦」として将棋史に残っている(棋士の肩書はいずれも当時)。