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「聖光だけが出る福島のレベルは低い」が終わった日…球速125km&スライダーのみ「166cm左腕」が絶対王者を破るまで《夏の甲子園》
posted2021/08/01 17:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
2021年7月20日。
福島県の高校野球に、激震が走った。
11時21分。
19年まで夏は13連覇。昨年の独自大会を含め14年間も福島の王座に就いていた第2シードの聖光学院が、第7シードの光南に1-5で敗れた。
11時42分。
第1シードの東日本国際大昌平が、第8シードの日大東北に逆転負けを喫した。
14時02分。
第3シードの学法石川が、ノーシードの福島成蹊に3-13の6回コールドという大差で屈する波乱が起きた。
大会は準々決勝と佳境を迎えていたとはいえ、優勝候補3校が立て続けに姿を消す異例の事態。県高野連関係者も「前例がないかも」と、困惑している様子だった。
「聖光ショック」
7月20日は、まさにそんな1日だった。
「子供たちが浮足立った」
「試合前に歴史が変わりましたから。聖光学院さんが負けたことで子供たちが浮足立って、変に気負ってしまったんじゃないかな、と」
ヨーク開成山スタジアムで聖光学院の次の試合に登場し、予期せぬ大敗で姿を消すこととなった学法石川の佐々木順一郎監督は、王朝陥落の余波を真正面から受け止めていた。
仙台育英時代に甲子園通算29勝。準優勝2度の実績を誇る名将ですら、その衝撃の大きさを咀嚼するように、ゆっくりと話す。
「おこがましい言い方になってしまいますが、『聖光学院が負ける』ということが、子供たちにとってどれほどものすごい事実なのかということを思い知らされたと言いますか。『こういう時にこそもらわないと(甲子園に行かないと)』と思って送り出しましたが、やはり冷静ではありませんでしたね」
公立校“166センチ左腕”の大仕事
聖光学院、敗れる。
この巨大な台風を巻き起こしたのは、身長166センチ、体重67キロと小柄な、公立校の左腕エースだった。