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転向を勧められても、高校総体に団体がなくても…「日本人には難しい」フェンシング団体エペで金メダル、“2つの原動力”とは
posted2021/07/31 17:03
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Takuya Matsunaga/JMPA
歴史を変えた。
7月30日、フェンシング男子団体エペが行なわれ、山田優、加納虹輝、宇山賢、見延和靖の4人で構成された日本が金メダルを獲得した。
フェンシングのフルーレでは太田雄貴が2008年北京五輪で、団体が2012年ロンドン五輪でメダルを獲得しているが、エペでは初めてのこと。
しかもエペは、サーブルも含めた3つのうちで、世界の競技人口が最も多い。全身を攻撃できるなどのルールの特性により、身長や手足の長さで総じて上回る欧州の選手が有利とされる。本場である欧州での人気も高く、そのぶん最も壁は高いとされてきた。これまで欧州勢が金メダルを占めてきた。つまり欧州以外で初めての金メダルであることも、その価値を物語る。
世界ランク1位のフランスは4連覇を目指していた
勝ち上がりが劇的だった。
初戦は対アメリカ。対戦国同士の3選手が総当たりで計9試合を行なう方式だが、7試合まで進んだ時点で6点、リードを許していた。
ここでリザーブだった宇山を出場させて追い上げると、最後の試合で加納が16点と大量得点で45-39、逆転勝利をあげた。
準々決勝は大きな山だった。世界ランキング8位の日本に対し、世界ランキング1位であり4連覇を目指すフランスとの対戦。8試合が終わって2点のビハインドを負うが最後に加納がここでもリードを奪い、45-44と逆転で勝ち上がった。
準決勝で韓国に45-38と完勝すると、決勝で迎えたのは世界ランキング7位のROC(ロシアオリンピック委員会)。1試合目に出場した山田が5-4でリードすると、一度も逆転を許さない。終わってみれば45-36、この日の日本にとってはいちばんの得点差で、堂々、快挙を成し遂げた。