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厳しすぎるリハビリを乗り越えて…長嶋茂雄が東京五輪にどうしても“参加”したかった理由《開会式・聖火ランナー》
posted2021/07/24 12:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Getty Images
ミスターが新国立競技場に立った。
東京五輪開会式のクライマックスとなった聖火リレー。聖火が新国立競技場に入ると柔道男子の野村忠宏さんとレスリング女子の吉田沙保里さんが火の灯ったトーチを手にスタート。そしてその2人からバトンを受けたのがV9巨人を支えたONコンビ、王貞治ソフトバンク球団会長と長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督に、長嶋さんの愛弟子である元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜さんだった。
トーチキスを行ったのは長嶋さんだった。自由になる左手で火を受けると、そこからトーチを王さんに渡し、松井さんに支えられながらゆっくりと歩み始めた。
「何らかの形で関わることができたら、自分にとっても最高の人生になるね」
長嶋さんが東京五輪の聖火ランナーとなる“夢”を語っていたのは、2018年に直接、取材をしたときだった。
脳梗塞で倒れ、アテネの地に立つことはできず
長嶋さんには五輪への長い夢がある。
日本球界が初めてオールプロによる“ドリームチーム”を結成して臨んだ04年のアテネ五輪。その代表チームの指揮を委ねられ、03年の台湾、韓国、中国との五輪切符をかけたアジア最終予選では見事に1位突破を果たした。
そうして本大会に向けて最後のチーム作りをしていた04年3月4日に脳梗塞で倒れ、アテネの地に立つことはできなかった。
「やっぱりオリンピックは特別なの」
しかし長嶋さんの中では野球に対する情熱と共に、スポーツの祭典と言われるオリンピックへの特別な思いは消えることはなかった。