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“9年連続ファイナリスト”笑い飯は「M-1を失った10年」をどう生きてきたのか? 哲夫46歳は「今の方が自由です」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byShigeki Yamamoto
posted2021/07/16 11:01
昨年結成20周年を迎えた笑い飯の西田幸治(47歳、左)と哲夫(46歳)
西田 そうなんですよね。ええ年になってからの方が、アホちゃうかという感じが増すんです。M-1に出ていたときのように4分間にみっちり詰め込むみたいなスピード漫才はできなくなってきているんですけど、そのぶん、余計「何してんねん」みたいな。
哲夫 M-1はある意味、4分の「競技漫才」なんで、アホらしいことをずっと4分間やり続けるわけにもいかない。計算して、ちゃんとウケるよう、キレイに重箱に詰め込まなければいけないんです。でも、アホらしいことをずっと言ってるのが漫才やなというのもあるじゃないですか。そこは今の方が自由にできていますね。
「やっぱり新ネタは必要」
――単独ライブだけは毎年欠かさず続けていたのですか。
哲夫 M-1があった頃、2003年、04年ぐらいからは、2カ月に1回くらいのペースで単独ライブをしていたんですけど、M-1で優勝してからは年1にしています。
西田 やっぱり新ネタは必要なんでね。関西だと新ネタやってくださいみたいな番組も多いので。使命感でやっているというよりは、タマを持っとかんとあかんなという。
――ここ数年、NGK(なんばグランド花月)などの寄席で見かける笑い飯は、いつも同じネタをかけていて、正直、もう漫才への情熱を失ってしまったのかなと思っていたんです。でも単独ライブを見て、毎年、こんなにたくさん新ネタを作っているのなら、それを寄席でも見たいと思ったのですが、そんなに簡単なものでもないのでしょうか。
哲夫 不特定多数の方がいらっしゃる寄席というのは、ネタ選びが難しいことは難しいんですよね。でも、これからは、新しいネタもどんどんやっていきたいと思ってます。年齢的にも吹っ切れてきて、新しいことに挑戦しやすくなってきているので。
――笑い飯がNGKでトリを取るようになったときにできるネタを今回の全国ツアーで作って欲しい、と話している関係者の方もいらっしゃいました。
西田 それはできればいいですよね。でも、今回は、久しぶりにあちらこちらに行けるので、そっちの楽しみの方が大きいかな。
――感染状況を見ながらのチケット販売になるので、そのあたりの調整はなかなか難しいようですが、販売分はあっという間に売り切れてしまったそうで。やっぱり全国のみなさんが笑い飯の漫才を心待ちにしていたんでしょうね。
哲夫 最近は、ネタ番組も増え、漫才に触れる機会も多くなっているとは思うのですが、やっぱりお笑いは生がいちばんですから。大変な時期ではありますが、僕らのライブで、ほんのひと時でも日常の疲れを忘れてもらえたら……と思いますね。