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《グレイシーハンターが52歳に》ファンを救った桜庭和志「プロレスラーは本当は強いんです」発言の真意とは?
posted2021/07/14 06:00
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Yukio Hiraku/AFLO
<名言1>
プロレスラーは本当は強いんです。
(桜庭和志/NumberWeb 2017年7月15日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/828469
◇解説◇
1993年、“黒船”と呼ばれたグレイシー一族の登場以降、なんでもありのバーリトゥード(現在のMMA)という舞台が生まれると、当時まだ存在した「プロレス最強神話」が急速に色褪せはじめていった。
94年12月にUWFインターナショナルの“裏・実力ナンバーワン”と言われた安生洋二がヒクソン・グレイシーに無残な返り討ちにあったのを皮切りに、次々と日本のレスラーたちがバーリトゥードで撃沈。97年10月11日の『PRIDE.1』で高田延彦までもがヒクソンに敗れると、プロレスラーの強さを疑問視する声が増えていった。
そんな時に現れたのが桜庭和志だった。
体重差“25kg”の黒帯柔術家
新団体キングダムに所属していた桜庭は、高田vs.ヒクソン戦のわずか2カ月後に行われた『UFC JAPAN』に出場。
試合4日前の緊急オファーを受けたことだけでなく(先輩・金原弘光の負傷欠場が理由)、対戦相手のカーウソン・グレイシー門下の黒帯ブラジリアン柔術家マーカス・コナンとの体重差はなんと25kg。しかも、天敵とされていた柔術家、ましてや黒帯の実力者相手とあって、ファンだけでなく関係者の多くはコナンの圧勝を予想していた。
しかし桜庭は、得意の低空タックルやグラウンドでの素早い動きで互角以上に渡り合い、そしてレフェリーのミスジャッジで再試合になるとさらにギアを上げ、最後は見事に腕ひしぎ十字固めを極めてタップアウト勝ちを奪った。
UFCにおける黒帯柔術家の初のタップアウトという、この大番狂わせに会場は一気に爆発。試合後、オクタゴン内でのインタビューで桜庭は、はにかみながら歴史に残る発言をした。
「プロレスラーは本当は強いんです」
この言葉はプロレスを信じられなくなっていたファンたちに自信を取り戻させたのだった。
プロレスと総合格闘技は「別物」
ここから12年後の2009年、NumberWebのインタビューで桜庭はこんなことを語っていた。
「当時のマスコミは、なぜかプロレスと総合格闘技を同列で語ろうとするんですけど、そんなの無理に決まっているじゃないですか。別物なんだし。マスコミもそれを分かっているのに、僕や読者を混乱させるようなことをごちゃまぜに訊いてきたり……」
「プロレスラーは強い、というのは本当に練習している人が強いわけで、中には体を大きくするためにウェイトしかやってない人や、決まり事の練習しかしていない人もいるわけです。僕が言いたかったのは、そんな状況下、真剣勝負でも勝てる練習をしているプロレスラーが強い、と」
「僕の言葉が“すべてのプロレスラーは強い”みたいな解釈になってしまって、当時は参りましたよ(苦笑)」