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「もう自分の足ではなくなってしまうんだ」号泣した“大怪我”を越えて、Marvelousの“赤い天才”彩羽匠が帰ってくる 

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伊藤雅奈子

伊藤雅奈子Kanako Ito

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photograph byMarvel Compony

posted2021/07/15 11:02

「もう自分の足ではなくなってしまうんだ」号泣した“大怪我”を越えて、Marvelousの“赤い天才”彩羽匠が帰ってくる<Number Web> photograph by Marvel Compony

同じ右膝前十字靭帯断裂、半月板損傷から復帰した「RIZIN」の堀口恭司に勇気をもらった、という彩羽。愛称は“イケメン女子”

 170cmの長身に、ジェンダーレスな容貌。真紅のコスチュームにオーラも身にまとう天賦の才は、プロレスの神様に導かれ、誘引されたかのよう。偶然にも、入団以降付き人を務めた長与と同じ九州女だ。「ドキュメンタリーや映画、動物系の番組、あと後輩が泣いていたら、それを見てもらい泣きすることはあるんですけど、自分のことで涙を流すことはあまりなかった」と言うのは、“女子プロ界のカリスマ”の背中を至近距離で見続けたことが、多少なりとも影響しているかもしれない。

 ところが昨秋、彩羽は子どものように泣きじゃくった。20年10月26日、東京・新木場1stRING大会で試合中、脱臼したうえに右膝膝前十字靭帯、右膝内側側副靭帯、右膝外側半月板を損傷。主治医は「全治10カ月」という非情な宣告をした。手術当日、ベッドからストレッチャーに移動して、医療従事者から「それでは(手術台に)向かいますね」と声をかけられた瞬間、涙腺が決壊した。コロナ禍で面会人数に制限があるなか、唯一許可された同行者の長与が狼狽したほどだ。

「あんなに怖くなったのは初めて」

「怪我をしてからその日まで、自分自身と向かい合うことから逃避していたんです。ギリギリまでインスタライブを配信してニコニコするほど、どこかで他人事だった。でも、あー、もう自分の足ではなくなってしまうんだ、これからは車いす、松葉杖の生活なんだと思うと、急に怖くなってしまった。3度目の手術にして、あんなに怖くなったのは初めて。涙が止まらなくて、自分でも驚きました」

 15年4月に右膝半月板と前十字を損傷して、初の手術を経験した。18年にも右足関節外側側副靭帯損傷および右足三角靭帯断裂により、靭帯を再建する手術を受けている。右は利き足。「バランス力や片足スクワットでは右のほうがやりやすくて、筋力もその分付いていた。それに頼りすぎていた部分があったのかもしれません」

【次ページ】 左上腕三頭筋に彫られた“3つのタトゥー”

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