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「これは戦いだ」NBAファイナルは予想を覆す“サンズvsバックス” チーム創設が同年、優勝経験者はゼロ…重なるいくつもの因縁とは?
posted2021/07/06 17:02
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Getty Images
今から約3年前、クリス・ポール(現フェニックス・サンズ)はNBAに入って13シーズン目にして初めてカンファレンス・ファイナルに進出できた喜びを、当時、ヒューストン・ロケッツでチームメイトだったPJ・タッカー(現ミルウォーキー・バックス)と分かち合っていた。ポールとタッカーは同じノースカロライナ育ちで子どもの頃からの友人だった。
「僕らはいっしょの大学に行くはずだったんだ。これだけ長いつきあいで、やっと同じチームでプレーすることができた。しかも僕ら2人ともこれまでプレイオフで2回戦より先に行ったことがなかったのだから、これをいっしょに成し遂げることができたのは本当にクールで特別なことだ」
当時、ポールはそう言っていた。
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しかし、このときのウェスタン・カンファレンス・ファイナルでは後にチャンピオンとなるゴールデンステイト・ウォリアーズ相手に敗退。3勝2敗と先に王手をかけたのはロケッツだったが、ポールがハムストリングを痛めて残り2試合を欠場したため連敗し、目前でNBAファイナルを逃した。ポールにとってもタッカーにとっても、NBAファイナルはまるで蜃気楼のように目の前に出てきては消えるような世界だった。
そんな2人が、今シーズン、揃ってNBAファイナルに進出した。お互いに、36歳にしての快挙だ。ただし今回はチームメイトではなく、敵味方に分かれての対戦だ。最後にはどちらかが笑い、どちらかが泣くことになる。勝負の残酷なところだ。
サンズとバックスの因縁
今年のNBAファイナルで対戦するサンズとバックスには、ほかにもいくつもの因縁がある。
タッカーは元サンズ選手として5シーズンをフェニックスで過ごし、当時ルーキーだったデビン・ブッカーとチームメイトだった。バックスのポイントガード、ドリュー・ホリデーはニューオリンズ・ペリカンズ時代に、モンティ・ウィリアムズ(現サンズHC)のもとで5シーズンの間プレー。
「コーチはみんなを自分の息子のように扱ってくれた。まるで父のような存在だった」とホリデー。
「僕にとってとても大事な存在で、選手としての成長を助けてくれた」
それでも、今回は敵と味方だ。
さらに歴史を遡ると、両チームとも1968年のリーグ拡張時に揃って新規創設された、言ってみれば同級生チームだ。翌1969年にはドラフト1位指名権をコイントスで争い、勝ったバックスが、ルー・アルシンダー(後のカリーム・アブドゥル-ジャバー)を指名したという因縁もある。アルシンダーを獲得したバックスは、その次のシーズンにNBA優勝を果たしたのだから、サンズにとっては逃した魚は大きい。