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37歳で現役引退? ダルビッシュ有(34)に聞く“大記録への挑戦はどうなる”「すごい人たちが残した数字に並ぶとしたら…」
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/07/06 06:00
4年ぶり5度目のMLBオールスター出場を決めたダルビッシュ有(34)
先発投手の1試合あたりの投球数は120球前後から100球前後に落ち着き、今では90球で打者3巡目に達していれば、降板となることも多い。その分、試合中盤から後半にかけてマウンドに上がる中継ぎ投手に勝ち星がつく確率が増え、その後にはセットアッパー、そして試合を締めるクローザーが「ホールド」や「セーブ」を記録して年俸を上げる時代だ。
対戦相手の実力云々の前にその投手が所属するチームの得点力や救援投手の能力にも大きく依存することになったので、「先発したら最後まで投げ抜く」時代よりも遥かに勝ち星がつき難くなるし、たとえば名球会の入会資格である通算200勝の達成が以前よりもはるかに難しくなったのも当然だろう。
それがMLBとなると、長い連戦が普通で、時にはダブルヘッダーも行われる。どのチームも先発投手が怪我するリスクを避け、日本よりも球数や登板間隔を徹底して管理するのでさらに「勝ち星」がつき難くなっている。現役最多勝利のジャスティン・バーランダー(アストロズ)でも通算226勝、左腕クレイトン・カーショウが184勝(ドジャース)、マックス・シャーザーが182勝(ナショナルズ)と、かつて“米国の野球殿堂入りの約束手形”みたいに扱われていた通算300勝は「夢のまた、夢」となってるのが現状だ。
マー君、石川、野茂、黒田…追い越すべき名選手たち
そんな日米プロ野球の現状を考えれば、今までチームに勝ち星がつくことにしか興味を持たなかったダルビッシュが、自らが積み上げた「通算170勝」に驚いたとしてもそんなに不思議なことではないのかもしれない。ましてやカブス時代の昨季から現在までの4カ月あまり、日本ハム時代以来という高い勝率=.700以上を記録している今だかこそ、「その先」の数字も何となく、見えてくるだろう。
通算170勝の「その先」とは――。
まず、MLB単独の通算勝利数ランキングで、ダルビッシュは通算78勝で田中将大と並んでおり、これを抜けば歴代2位の黒田氏の79勝に並ぶ。80勝して単独2位になれば、日米合算で通算174勝になる計算なので、次に待っているのは日本人投手の通算勝利数37位タイの石川雅規の通算176勝、そして同34位タイの田中将大の日米通算180勝ということになる(いずれも現役なので、海を挟んで抜きつ、抜かれつの通算勝利数レースとなる)。
180勝に達した時点で、通算201勝の野茂氏までは残り21勝、通算203勝の黒田氏までは23勝なので、ダルビッシュ(とパドレスと言った方が良いかも知れない)が今の勝率を維持することができれば、来年か再来年にそれらの記録に並ぶか、追い抜くことになる。
そして、そうなった頃にもう一つ、ランキングの上位に食い込んでくると予想される記録がある。それは日米通算の奪三振数だ。