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皇治のバッティングは“悪”か? 倒れた梅野は「彼の“覚悟の表れ”」、優勝した白鳥は「自分の弱さだと思う」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2021/07/06 17:04

皇治のバッティングは“悪”か? 倒れた梅野は「彼の“覚悟の表れ”」、優勝した白鳥は「自分の弱さだと思う」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

皇治(右)のバッティングで梅野源治(左)は鼻骨を骨折した

「“決勝戦はやってくれ”とお願いした」

 このトーナメントの話題は皇治のバッティングに終始しているが、白鳥と梅野は異なった見解を示す。優勝した直後、マイクを握った白鳥は「皇治選手、バッティングに気をつけて」と注意を促したが、必要以上に糾弾することはなかった。試合後は「バッティングはもらった自分も悪い。自分が相手を懐に入らせなければもらわなかったわけで。そこは自分の弱さだと思う」と自らの非すら認める発言をしている。

 その数日後、梅野はSNSでこんな発言をした。

「彼(皇治)が1R目からあれだけ前に出てきたのは“覚悟の表れ”。たくさんの人たちの想いを背中や拳に乗せて闘うとき、ああいうことが起こることもある。彼も俺もメチャクチャ辛いし、周りには本当に申し訳なく思うわけです。傷口に塩を塗るような言葉はいらない。俺はケガをした。だけど、このままキックトーナメントが途中で終わるのは嫌だったから、今後ももっと立ち技格闘技を盛り上げていきたいから、俺からRIZINや皇治選手に“決勝戦はやってくれ”とお願いした」

“バッティング”から見えたものとは?

 一方、白鳥はトーナメント優勝のクオリティにもこだわっていた。「1回戦に勝っただけで巻くベルトなんて、大して価値はないですよ」

 初戦で白鳥に壮絶なKO負けを喫した高橋亮も含め、このトーナメントに参戦した選手には「もっとキックを盛り上げたい」という共通した熱い想いがあった。白鳥は「みんなわかっていると思うけど」と前置きしたうえで、RIZINにおけるキックの立場を訴える。「RIZINはMMA(総合格闘技)がメインになっている。キックが軽く見られている部分はまだまだ全然あると思うので、キックボクサーがメインを張れる機会をいただいたことには本当に感謝しています」

 この発言を聞いたとき、筆者は2016年4月に行なわれたRIZIN名古屋大会を思い出した。第1試合から第3試合まではキックの試合が組まれていたが、出場選手は用意された豪華な入場ゲートではなく、コーナーから控室へと続く通常の通路からの入場を強いられていた。キックボクサーに対する待遇の劇的な変化は、那須川天心の登場を待たなければならない。

 皇治のバッティングは許されるべき行為ではない。しかし、このトーナメントで最も語るべき問題はそれが故意かどうかではなく、出場した選手たちが胸一杯に抱えたキック愛ではなかったのか。

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