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皇治のバッティングは“悪”か? 倒れた梅野は「彼の“覚悟の表れ”」、優勝した白鳥は「自分の弱さだと思う」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2021/07/06 17:04

皇治のバッティングは“悪”か? 倒れた梅野は「彼の“覚悟の表れ”」、優勝した白鳥は「自分の弱さだと思う」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

皇治(右)のバッティングで梅野源治(左)は鼻骨を骨折した

  K-1で青コーナーのトップを張っていた皇治にとって、舞台がどこであれ、もっとも旬な格闘家との対戦を希望することはしごく当然のことだった。

 白鳥は、今年になってから「人気や知名度でマウントばかりとってくる」ことを理由に、皇治と対戦する気持ちが薄らいだことを認めている。ところが、今回のRIZIN大阪大会で皇治がキックボクシングのワンデー・トーナメントの開催をぶち上げたことで事態は急転する。新型コロナウイルスの影響で外国人選手の招聘は難しいこともあり、白鳥のマッチメークはホームのRISEでも宙に浮いたままだった。白鳥の参戦表明はRIZINにとっても渡りに舟。「嫌われ者だけど、人気者」というスタンスの皇治と、白鳥の“キック界の王子様”というキャラクターは好対照なので対立軸を作りやすい。

 4月30日に行なわれた会見で皇治は白鳥を「天ちゃん(那須川)のかばん持ち」と思い切り見下した。一方の白鳥も負けてはいない。「かばん持ちに負けたらどうするんですかね」と絶妙の切り返しを見せた。

レッドカードを出すのも一考ではなかったのか

 お互い初戦(準決勝)を勝ち上がれば決勝で対戦が実現するというシチュエーションだったが、大方の識者は「皇治は本当に初戦を勝ち上がることができるのか?」という疑問の声をあげていた。というのも、初戦の相手である梅野の名はムエタイの本場タイにも響くほどの実力者だったからだ。

 今回のトーナメントで採用されたキックとムエタイのルールは似て非なるもの。後者で認められたヒジ打ちや首相撲からのヒザ蹴りの連打は前者では認められていない。梅野はムエタイのスペシャリストだが、一昨年はRIZINのキックルールとほぼ同じルールを採用しているRISEが主催した世界トーナメントに参戦し、決勝まで進出している。今回も梅野が当たり前のようにルールに順応してくることは容易に想像できた。

 ところが、いざ試合開始のゴングが鳴ると、梅野は本領を発揮しないまま救急車で緊急搬送されてしまった。事件は、これだけで終わらない。決勝で皇治と対戦した白鳥も、「何回もバッティングを受けた」と証言しているからだ。巷では「故意ではないか?」という意見もあるが、皇治は「もちろんわざとではない」と否定する。

「ただ、ああいうふうにダメージを負わせたということは自分に非があると思う。何も言い訳はしません」

 K-1時代の皇治と対戦した武尊も、バッティングには苦しんだと語っている。気持ち先行で攻める選手は往々にして頭から入るケースが多い。本人のクセが直らないならば、レフェリーが勇気を持って減点を伴うレッドカードを出すのも一考ではなかったのか。

【次ページ】 「“決勝戦はやってくれ”とお願いした」

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