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「僕は一度死んでいるんです」 こけて、こけてこけて“ラスト1枠”をつかんだ亀山耕平のじぐざぐな体操人生 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byAFLO SPORT

posted2021/07/03 17:00

「僕は一度死んでいるんです」 こけて、こけてこけて“ラスト1枠”をつかんだ亀山耕平のじぐざぐな体操人生<Number Web> photograph by AFLO SPORT

亀山耕平は七転八起の体操人生を歩んできた。たどりついた東京五輪ではどんな演技を見せるのか

「体操は難しい。何やっているんだ、俺」

 ところが、満を持して臨んだはずの世界選手権本番ではまたしても試練に直面した。予選でミスをして決勝に進めなかったのだ。

 華々しいスポットライトの中、間もなく選手入場が始まる決勝会場の裏で行なったインタビュー。亀山はさすがに元気がなかった。

「体操は難しい。何やっているんだ、俺。また自分との戦いに負けました」

 だが、東京五輪を目指すからには下を向きっぱなしでいるわけにはいかなかった。言葉を選びながら話をしていくうちに、前向きな気持ちが出てきた様子だった。

「(内村)航平や(白井)健三は大舞台でも動じない力がある。練習でつくっているというのもあるし、元々備わっているものでもあって、それが彼らの強みでもある。彼らは自分と勝負していると思うので、そういう領域に自分も近づきたい」

明確な基準のない代表選考レース

 18年11月から始まった東京五輪の種目別個人出場枠を懸けたワールドカップでは、全8戦ある中の第3戦から参戦し、優勝2度、3位2度としっかり成績を残してきた。

 東京五輪の種目別代表選考レースは、何度優勝すれば必ず代表権を得られるとか、何点以上出せば権利を得られるとか、誰に勝てば行けるとか、そのような基準がなく、「正直、どうやって目標を定めればいいのかが分からないので難しい」と語ったこともあった。国際大会では好成績を残せても、国内大会でミスをすることもあったし、最後には同じ徳洲会に所属する跳馬の米倉英信との争いもあった。

 できるのはただひたすら、頑張ることのみ。こうして迎えたのが6月下旬にカタール・ドーハで行われたワールドカップ最終戦だった。亀山は旋回で足が割れてバランスを崩しそうになるなど、完璧な演技だったわけではなかった。しかし、演技を終えた時には苦笑い交じりの清々しい表情をしていた。

【次ページ】 「こけて、こけてこけて。そういう体操人生」

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