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「本当に必要な選手は誰か」東京五輪ラグビー男女セブンズ選考に感じる難しさ…“ベテランごっそり落選”の意図とは?
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuHiko Otomo
posted2021/07/02 17:00
東京五輪内定メンバー落選から一転、バックアップメンバーに加わった中村知春
おそらく、2016年も、同じことが起きていたのだと思う。
7人制ラグビーが正式種目となって初めての本大会であるリオ五輪開幕まで1カ月に迫っていた6月29日、東京都内の明治記念館で、リオ五輪「ラグビー日本代表選手団」男子14人、女子13人が発表された。ひな壇で男女の代表メンバー全員の集合写真が撮影され、五輪本番で着用する新ジャージーが発表された。メディア露出の少ないセブンズでは異例の空間がそこにはあった。
そして北海道合宿を経た7月16日に発表されたリオ五輪代表では、6月29日に発表された「日本代表選手団」には入らず、バックアップメンバーだった鈴木彩香と三樹加奈(ともにアルカス熊谷)が逆転で代表入り。内定していた竹内亜弥(現姓・中嶋、アルカス熊谷→弘前サクラオーヴァルズ)と加藤慶子(世田谷レディース)がバックアップメンバーに回り、中丸彩衣(アルカス熊谷)はメンバーから外れた。
男子は同17日、オーストラリア合宿を経て最終的な五輪メンバーが発表された。サンウルブズを離れて合流したものの負傷からの回復が遅れた山田章仁(パナソニック、現NTTコム→シアトル・シーウルブズ)が外れ、6月29日の発表ではバックアップメンバーだった豊島翔平(東芝)が代表入り。オリンピック選手団14人に入っていた藤田慶和(パナソニック)と松井千士(サントリー、現キヤノン)の名前はバックアップに移された。
「五輪の選手団14人に入ったことで、ケガをしたくないという思いがあったのか、アグレッシブになりきれなかった」
最後に代表を外れる屈辱を味わった藤田は後に、オーストラリア合宿をそう振り返った。
だが、その苦い経験を知っているはずの藤田と松井さえ、今年の東京五輪代表決定後の練習では、厳しい空気を発することはできていなかった。
あえてベテランを外す仕掛け?
やはり五輪はほかの大会とは違う。代表に選ばれれば、普段の大会では興味を示さなかったメディアが次々と取材を申し込んでくる。五輪への抱負は、メダルへの思いは、競技を始めた動機は、故郷への思いは、恩人への思いは……浴びせられる質問の種類が変わる。知らず知らず、平常心が失われてもおかしくない。
逆に、代表最終候補から名前が外れ、練習相手として同行した選手にとって、失うものは何もない(取材攻めもない)。練習ではアグレッシブに行くだけだ。練習相手が激しく厳しくいくことこそ、チームを鍛え、本番の勝利につながるはずだから。そして、そんなパフォーマンスを見て、監督、ヘッドコーチが心を動かされても無理はないと思う。
いや、もしかしたら、そこには意図的な仕掛けがあるのかもしれない。
あえてベテランを外す。ベテランがいなくなったところで、若いリーダーがどれだけ自覚し、ブレイクするかを見極める。同時に、五輪を目前に控えた時期に外したベテランがどう振る舞うのかも。五輪本番で真に必要な選手は誰なのか。それを本当に見極めるのは、「内定選手」を発表してからなのかもしれない。