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ロマチェンコ戦に中谷正義の“勝ち目”はあるか 中量級日本人ボクサーが圧倒的不利の海外オッズを覆しうる要素 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byNaoki Fukuda

posted2021/06/26 17:03

ロマチェンコ戦に中谷正義の“勝ち目”はあるか 中量級日本人ボクサーが圧倒的不利の海外オッズを覆しうる要素<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

中谷正義はロマチェンコとの試合に挑む。日本人ボクサーが中量級でも強いことを世界に示す一戦になるかもしれない

中谷がロマチェンコに勝てば世界が驚愕する

 また、記録サイト「ボックスレク」を検索してみると、ライト級に名を連ねるボクサーは世界で1713人であり、これは二つ上のウェルター級の1743人に次いで2番目に選手数が多い(ちなみにヘビー級は1093人、井上尚弥のバンタム級は747人)。階級によっては強い選手が出る国に偏りが出るのだが、ライト級は国や人種に関係なく、最も選手の集まりやすい激戦区と言うことができる。

 この試合の価値が少しお分かりいただけただろうか。中谷がもしロマチェンコに勝てば、世界中のボクシングファンが「マ、マジか!!」と驚愕するのは間違いない。では、中谷に勝ち目はあるのか? ここからは試合の行方を占ってみよう。

「ロマチェンコはライト級がベストの階級じゃないと思う」

 中谷は戦績19勝(13KO)1敗の32歳。日本国内でキャリアを重ね、東洋太平洋ライト級王座を獲得して11度の防衛を成功させた。2019年にアメリカでテオフィモ・ロペス(米)とIBF挑戦者決定戦を争い判定負け。このロペスが翌年10月、ロマチェンコの最強神話を崩壊させ、ライト級統一王者に輝いたのである。

 中谷の特長、最大の武器はその恵まれた体格にある。身長は182センチあり、ロマチェンコの170センチと比べると12センチも高い。もともとロマチェンコは、一つ下のスーパー・フェザー級、もう一つの下のフェザー級が適正ではないかと長く指摘されてきた。中谷本人も「ロマチェンコはライト級がベストの階級じゃないと思う。そこのアドバンテージはすごく大きい」と語っている。ロペスに敗れた要因は試合後に手術した肩のけがなど一つには絞れないとはいえ、体格差の影響は確実にあったように見えた。

 となれば体格で勝る中谷が長いリーチを生かして距離を取り、得意のジャブを軸にしてロマチェンコをインサイドに侵入させずにポイントを重ねる、という戦い方がセオリーのように思える。しかし、それをやすやすとさせないのがロマチェンコである。キャンバスを滑るようなステップワークで前後左右に動き、好調時のロマチェンコはその華麗な動きでどんな相手も翻弄してきた。まるで大人が子どもに稽古をつけているような試合を何度も披露してきた。

【次ページ】 海外ファンの関心はロマチェンコの復調と次の対戦相手

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