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「アイドルを目指して、自己否定が止まらなくなった」 絶叫するシンデレラ、上谷沙弥はプロレスのセンターに立つ
posted2021/06/29 11:01
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
お色直しのように濃いグリーンのドレスをまとったシンデレラはこの上なく素敵だった。
スターダムの上谷沙弥はシンデレラ・トーナメント決勝で舞華を倒して、シンデレラ女王になった。
6月12日、大田区総合体育館。シンデレラ・トーナメント決勝戦、上谷は今までの試合で一番自信を持って戦えた。舞華とはデビューしたばかりの頃からやりあっていて、舞華にだけは負けたくなかった。
上谷がプロレスラーとしてデビューしたのが2019年の8月10日だから、まだ1年10カ月しか経っていなかった。
「プロレスに出会うまでに、ダンスだったりアイドルだったり、他の人がしていないような経験をたくさんして来たんですけど、そこでは自分の納得いくような結果が出せなかったんです。でもプロレスでセンターになれました」
上谷は「センター」という言葉を使い、嬉しさは素直に顔に現れた。でもその道のりは上谷にとって順風満帆だったわけではなかった。
オーディションに落ちまくり自己否定が止まらなかった
「プロレスに出会う前、死んだように生きている自分がいました。顔もドヨンとしていて、活気がない。希望がない。生きる意味ってなんだろうって。バイトAKBを卒業してから、またアイドルを目指してオーディションを受けまくったんですが全部落選。自己否定が止まらなくなっていました」
上谷はそんな日々を回想した。
「自分ってなんなんだろう。やっと受かったのが、(中野)たむさんのグループ。そこから出会ったのがプロレス。最初、両親は反対していたけれど、最近変わったねえ、と言われました」
シューティング・スター・プレスとか使うと「なんであんな危ないことするの」と何度も叱られた。でも最近では、応援してくれている。3月の日本武道館の林下詩美戦も両親が見にきてくれた。先日の大田区は生配信で見てくれて「ケガはない? ドレス似合っていたね」と喜んでもらえた。