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【日本選手権】「レース前に伊藤達彦の動画を見ています」 Hondaの青木涼真、荒井七海は“リミッターを切った走り”ができるか? 

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加藤康博

加藤康博Yasuhiro Kato

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posted2021/06/23 06:00

【日本選手権】「レース前に伊藤達彦の動画を見ています」 Hondaの青木涼真、荒井七海は“リミッターを切った走り”ができるか?<Number Web> photograph by AFLO

伊藤達彦の走りに強い刺激を受けた青木涼真(中央)は、3000mSCで五輪へ続く最後の大舞台に挑む

「1番にゴールすることだけを考えて欲しい」

 求めるのはリミッターを切った走り。その表現が適切だと小川監督は教えてくれた。青木自身もそれが分かっているからこそ、この7カ月、自分のレース前に伊藤の走りを見て、きっかけを探し続けてきた。

 今季序盤のひとつの節目と考えていた5月9日、三浦が日本記録を出した東京五輪テストイベント「READY STEADY TOKYO」では8分26秒30の5位だった。

「悲観していません。このレースをもう一回、日本選手権でやれればいいという手応えを得られる内容でした」

 そう本人が振り返る理由は2000mを過ぎてから先頭に近いポジションをキープできた点にある。以前であれば引いてしまう場面で強い気持ちを持って攻められた点を収穫に挙げる。

 日本選手権でも攻め続けるために。この1カ月半は自らやるべきと考えた練習を小川監督に伝え、一緒にメニューを組んできた。5月29日、母校、法大で行われた記録会では1日に1500m、5000mの両方に出場。練習の一環の位置付けだったが1500mでベストを更新し、5000mでも想定以上のタイムで走った。走力面の強化は順調。小川監督も「練習では目指す走りはできています。大切なのは引かない姿勢と攻め続ける気持ちです。1番にゴールすることだけを考えて欲しい」と覚醒に期待する。

 青木は昨年に東京五輪へのチャレンジを決めてからずっと「日本で1番になって代表の座を決めたい」と語ってきた。その考えを変えることなく、今回、リミッターを切った走りを実現し、頂点に挑む。

「達彦を見ると部活に取り組む中高生の頃を思い出す」

 伊藤に刺激を受けた選手として今大会に挑む選手として荒井七海も紹介しておきたい。冒頭に記した通り1500mで17年ぶりに日本記録を更新した。伊藤や青木より3年先輩にあたるこの26歳は2019年より練習拠点を世界のトップクラスの中距離選手の集うアメリカ・オレゴン州のバウワーマントラッククラブに移している。単身、海外でのトレーニングを重ねていた荒井の目にも日本に戻った際に見る伊藤の存在は刺激的だった。

「達彦は速くなることに貪欲で、彼を見ていると部活に取り組む中学生、高校生の頃を思い出します。自分もアメリカに行って単純に“足が速くなりたい”という感情が芽生えるようになったんですが、日本に帰ってきたら同じような選手がいたのでビックリしましたね。普段から監督の話を聞く姿勢も素直ですし、レース本番で勝ちたいという気持ちをそのまま出せる。自分も見習わないといけないなと感じています」

【次ページ】 「日本記録保持者としては勝つべきレース」

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