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体操・白井健三は最後に笑顔で手を振った 24歳で引退の“ひねり王子”がガッツポーズで競技を終えるまで
posted2021/06/20 17:01
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO SPORT
24歳のオリンピック金メダリストが現役を引退した。トップアスリートの競技生活が長くなっている昨今の状況を踏まえれば、24歳という年齢がまだ十分に若いと見られるのは不思議ではないし、実際、惜しむ声は多い。
だが、6月16日に日本体育大学で行なわれた引退会見で、体操の2016年リオ五輪金メダリストである白井健三は、実にすがすがしい表情を浮かべていた。約1時間の質疑応答は終始さわやかな口調で進んだ。
「本当にすっきりした状態で現役生活を終えることができて、選手としての未練は一つもない状態でこの記者会見に臨みました。今後は助教という立場で、選手たちに経験を伝えたい」。そう語る様子から見えたのは「やり切った」という充実感に他ならなかった。
白井に世界中が刮目し、内村も舌を巻いた
19歳で出場したリオ五輪で、男子団体総合金メダルと種目別銅メダルを獲得した時から、「現役は地元開催の東京五輪までかな」と決めていた。
24歳だがトップシーンでの競技生活は長い。中学3年生で11年全日本種目別選手権ゆかに出場していきなり2位になり、周囲を驚かせた。ひねり技のレベルの高さは、同じくひねりを得意としている内村航平も舌を巻くほどだった。
高校2年生だった13年には、年齢制限をぎりぎりの条件でクリアして初出場したアントワープ世界選手権で、種目別ゆかの金メダルを獲得した。演技の難度を示すDスコアが群を抜いていることもさることながら、70秒間の演技の一番最後にF難度の「後方伸身宙返り4回ひねり」を入れる圧巻の構成に世界中が刮目した。
4回ひねりは「シライ/ニュエン」と大会後に命名され、同じくこの時に成功させたF難度の「シライ2(前方伸身宙返り3回ひねり)」、同大会の跳馬で成功させた「シライ/キム・ヒフン(伸身ユルチェンコ3回ひねり)」と並んで、通算で6つある「シライ」の最初の1つとなった。“ひねり王子”の愛称は瞬く間に広がり、内村と並ぶ体操界の顔となった。